高瀬アキ / Silke Eberhard / 井野信義

Ornette Coleman Anthology』をリリースした高瀬アキとSilke Eberhardのデュオが来日してツアー中。今夜は井野信義を加えてピットインでライブ。『Ornette Coleman Anthology』は勿論、『Something Sweet, Something Tender』、そして昨年の高瀬さんのライブ印象が良かったので当然足を向ける。しっかし、昨夜と今夜、客層の違いが面白い。



ライブは生音で行われた。演奏されたのはOrnetteの楽曲。基本はトリオでの演奏だけど、高瀬さんとEberhardのデュオ、高瀬さんと井野さんのデュオもある。演奏の連なりが流れを作るというより、演奏される曲ごとに完結した印象。それぞれに特に大きな変化は無くても飽きる事がなかったのは、楽曲の魅力と各々が1人よがりにならない演奏を心がけたからだと思う。

高瀬さんがドイツの音大でアンサンブルの講師をしていた時の生徒だったというEberhardはドイツの管楽器奏者で、サックスとクラリネットを扱う。ドイツという事もあり、勝手に大柄な女性を想像していたけれど、実際はアルトサックスのサイズがフィットする様な人で、高瀬さんに仕込まれたと思われる日本語でのMCが笑いを誘う。演奏されるのはフリージャズであるにも拘らず、眉間に皺のよるような表情ではなく、嬉々とした雰囲気さえある。これが音にも表れていて、軽快なアルト、艶やかなクラリネット、どちらも印象に残った。

PA無しという状況は少々アコースティック・ベースには不利だったけれど、時折見せるアグレッシヴなソロで存在感を消さない井野さん。まあ、今更この人をどうこう言う必要は無い。オレは凄く好きな演奏家

高瀬さんは今夜の演奏では最もエゴイストだったかもしれない。凛とした音色のピアノはそのおかげでカオスにはならないけれど、存在感は随一。無伴奏な状態での演奏は、多分そういう状態で聴くピアノの中で、最も惹きつけられた。



演奏されたOrnette Colemanの楽曲を聴いていて、耳に馴染んでいるものだけではなく、そうじゃないものもあったけれど、Monkの曲だと思っていた曲がOrnetteのものだったと気付いたりして、その2人のスタイリストに勝手に共通点を見つけたりした。98年と06年、オーチャードでOrnetteのライブを見る事が出来たけれどどちらも気にいっていない。だから今夜の演奏で、Ornetteの曲をライブで聴く事の面白さを知る事ができて良かったと思う。多分日本ではOrnetteのライブをピットインの様なハコで聴く事は叶わないだろうけれど、そうなればOrnetteのライブをもっと楽しむ事ができるだろうと思う。