Tokyo Conflux 2008 - The Thing + Ken Vandermark - 2nd Night

2daysのライブがアナウンスされて、特に両日の違いが表記されていなければ足を向けるのは1日だけにしようと思っている。The Thing + Ken Vandermarkの2daysは特にそういう表記はなかった。けど、結局というか、最初から両日行く事に決めていた。同じような演奏内容でもいいという判断だった。いい加減な話だ。

Tokyo Conflux 2008の中日の今夜、ピットインでThe Thing + Ken Vandermarkの2夜目。2ndセットでPeter Brotzmannが加わるというネタは昨夜経験したので、今夜はとにかく色々考えながら聴いてやろうと思っていた。

1stはVandermarkの印象が強く残った。昨夜、2ndは3管編成の圧力で全部まとめてな印象になったのだけど、1stはMats GustafssonとVandermarkのそれぞれを聴き分けていた。だけど、VandermarkはGustafssonよりソロの時間が短く、The Thingというバンドにフィーチャーされる形だから遠慮しているのだろうか?と思っていた。だけど今夜の1stのVandermarkのテナー・サックスは、Gustafssonのバリトン・サックスよりも前に出ていた。クラリネットへの持ち替えもなかったし、昨夜はステージ右側にGustafssonと並んで演奏していたけれど、今夜は1曲目の途中で左側に移動し、見た目のバランスにまで気を配れる余裕があった(のだと思う)。1stは3曲演奏されたけれど、その2曲目、Vandermarkが曲のテーマを奏でた時、Coltraneの曲じゃないか?と思い、それに続くソロも、それを聴いているような気分になってしまった。それは演奏が似ているとかそういう事じゃなくて、何かに向かって正面から突き進んでいくような、そういう力強さを感じる演奏だったという事。

2ndの前というか、2ndのイントロとでもいうか、またしてもサービスの様なセット。今回はBrotzmannとIngebright Haker Flatenのデュオ。オレのツボが押される。休みなくクラリネットでゴリゴリ吹き続けるBrotzmannを逃さず追いかけるFlatenのベース。いや、マジで涎もの。余談だけど、BrotzmannのクラリネットはVandermarkなんかが使っているクラリネット(多分B♭クラリネット)より短い。あれってDかE♭って事なのだろうか?

昨夜のThe Thing + Ken Vandermark + Peter Brotzmann状態を見ていて、この編成が日本が初なら余計に得したと思いながら、でも、例えばBrotzmannの代わりに日本人のサックス奏者が加わるとしたら?と考え、1人だけ頭に浮かんだ。出来れば今夜、その人が加わらないかなあと思っていた。BrotzmannとFlatenの白熱したデュオが終わり、その、オレの夢想した人物が登場。坂田明マーク・ラパポート氏にしてやられました。編成は坂田さん + Vandermark + Flaten + Paal Nilssen-Love。坂田さんとPNLのデュオ状態で演奏が始まる。贔屓目無しで、昨日今日と見ているサックス奏者に全然負けていない。対等。しかも音の個性が違うから、耳がリフレッシュされる。思いっきり熱を上げた後にVandermarkにスイッチ。ここでのVandermarkも凄い。多分、この3日間で聴いたVandermarkの音で、最も熱っぽかった。そろそろ坂田さんも加わるのか?というタイミングで坂田さんを見ると、音を出そうとしてはなんかしっくり来ていない様子。楽器のトラブル。何度か音を出そうとしてもダメで、結局はピアノ上に置いてあった誰かのアルト(多分Brotzmannのアルト)を手に取り、リードを付け替え演奏に復帰。事なきを得た。

本編最後はThe Thing + Peter Brotzmann坂田明。これがまた・・・。中盤からBrotzmannと坂田さんがお互いの音に触発され過剰なまでに音が進む。この時PNLが必死に喰らい付き、GustafssonとFlatenは一旦手を休めていた。そしてタイミングを見計らって演奏に加わろうとするGustafssonだけど、タイミングが掴めないのか、Flatenが一緒に演奏を加わる事を忘れて聴き入っているせいなのか、何度もバリトンを構えては止めを繰り返し、その間Brotzmannと坂田さんは音敷き詰めまくり。なんとかGustafssonとFlatenが演奏に加わって演奏は閉じられたけれど、この時のPNLの表情が忘れられない。あの、いくら叩いても疲れた表情を見せたことのないPNLが明らかに疲れている。多分今日までに、オレは10回近くPNLの演奏を聴いている。だけどこんな表情は初めて見た。PNLを疲れさせる坂田さんとBrotzmann。

アンコールはVandermarkも加わり、The Thing + Ken Vandermark + Peter Brotzmann坂田明。と言ってもいいけれど、実際にはThe Thingらしい演奏では無かったので、その呼称は当て嵌めにくい。管楽器奏者がそれぞれ、自分の持っている楽器で高音のものに持ち替え、フレーズよりもトーンで聴かせる演奏。激しさの後のこの美しい音色は、クールダウンというより、激しさの中に寝ていたものを覚醒させるようだった。