Jim O'Rourke / 八木美知依 / 黒田京子 / 田中徳崇

ピットインでJim O'Rourkeの2days。初日の今夜は箏の八木美知依、ピアノの黒田京子、ドラムの田中徳崇とのセッション。1st2nd共に1曲の構成。もちろんその中でいくつもの転換があった。

O'Rourkeはギターをあらゆる手段でアプローチする。アグレッシヴに咆哮する事が目的ではなかったはず。自身の音の配置と全体の方向を常に先読みしているようだった。

箏がギターのようでありベースのようでありヴァイオリンのようであり二胡のようであり、そしてパーカッションにまでしてしまう八木さん。試みる事で一つの楽器に色んな性格を持たせる事が可能という事を実践してみせているようだった。そして、実は八木さんはグルーヴ・メイカーで、そういう時の音が、箏という楽器らしい音とも思える。

ピアノの音の性格上、というかオレの聴力の問題かもしれないけれど、音が在る時と無い時が、そこを注視していなくてもすぐに気付けてしまう。黒田さんはそれを上手く扱い、さらにアコーディオンや縦笛やヴォイスを使い、絶妙なタイミングで手拍子も飛び出す。

今夜初めて音を聴いたのがドラムの田中。シカゴで活動していたらしく、実は全く聞いたことの無い名前だった。ドラムの個性にすぐに気付けない事が多いのだけど、田中のドラムはかなり面白かった。ドラムのエゴのような大きな音は殆ど使わず、粒の揃った細かい音を多用する。圧力で音楽をコントロールしてない。そのドラミングは、いかにもドラムという叩きではなく、パーカッシヴというのとも少し違う。打ち込みなんかで使われどうなパターンをプリミティヴな音色で表現しているというか、なんて言うか。とにかく要注意人物。

4人とも、自分のエゴを押し付けるような場面が無かった。強い音は出てくるのだけど、周りの音を拾いながら音を当てはめていた。セッションというのは大体そういうものだと思うけれど、そういう演奏に長けている面子が揃ったのだと思う。そしてライブならではの醍醐味、特に演奏は続いているけれど音は止まっている場面の緊張感は、今夜の演奏が録音されて、それを聴いたとしても感じることは出来ない。