峰厚介

先週の盆休みからオリンピックを見続けている。その休みの時には、オリンピックと高校野球の時期が重なったりして、チャンネルを変えながら見ていたりした。元々は高校野球なんてほとんど見てなかったのだけど、スポーツが巨額の商売に姿を変えた象徴であるオリンピックと、メンタルに野心を抱えた選手達が集う高校野球、その立ち位置を確認するのが面白かった。オレが見た限り、高校野球のあの大会は20年前から殆ど変わっていない。それは当たり前の話なのだけど、オリンピックのアホらしい開会式とか見ていると、「オリンピックってアマチュア・スポーツの祭典じゃなかったっけ?」という考えがグルグル回る。W杯でもこんなバカバカしい事やらん。

昨夜は、なでしこジャパンの3位をかけた戦いとソフトボールの決勝という、日本で五輪を見ている分にはクライマックスな試合が同じ時間帯に行われるという事だったので、チャンネルを変えながらチェックするはずが、考えが変わってピットインに行った。正月に見たライブでサックスを吹いていた峰厚介がメインのライブ。『Plays Standards』というCDで録音をした面子が揃い、そこにベースの井野信義の名前を見つけ、フリー・ジャズではない井野のベースに多大な興味が沸いた。ドラムの村上寛もよく目にする名前なので、音を聴いておく機会になるのもいい。ピアノが板橋文夫という点がオレの不安要素だけど、まあ、いい。

CDのタイトル通り、スタンダードな楽曲が多く演奏された。普段のオレの趣向ではジャズ・スタンダードな楽曲を好まないけれど、時々こういう音が聴きたくなる。多くの人のジャズのイメージに反しない音。それが聴きたかったわけで、正にそういう演奏が聴こえる。峰のサックスは朗々としながら曲のテーマを適度に発展させたソロで渋く決め、井野も端正なジャズなベースを弾く。初めて音を聴いた村上も、当然のようにキッチリとリズムを固め、上げどころでは音を張り上げる。(オレ個人にとって)問題児板橋も、弾き過ぎ一歩手前ぐらいでソロを決め、一安心。が、2ndの途中から、やはり板橋の弾き過ぎが顔をのぞかせる・・・。峰がフリーキーな音を殆ど使わない人なのに対し、板橋の激しく連打される音でのソロは饒舌を超えて過剰に聴こえてくる。これがピアノ・トリオなら楽しいのだけど、管がいる編成で、しかもリーダーじゃない時にここまで弾かなくてもいいんじゃないだろうか?と思ってしまったりしたけど、他の客は喜んでいたので、あれはあれで正解なのだろう。正月に聴いた時ほどやりすぎ感は無かったし、ソロじゃなくて、バッキングで入れ込んでくる音は好みだったりする。難儀な人だ。

昨夜の演奏で、一番耳を惹かれた演奏は、結局井野さんの音だった。2ndで演奏された曲で井野さんのソロから始まる演奏があり、そのソロがフリー・インプロを思わせる音を挿みながらのもので、圧巻だった。特に不穏な音を出すアルコにやられ、できればこのままこの演奏を聴き続けたいと思ってしまったりした・・・。




ジャズなライブなので恒例のソロの後に拍手があります。オレはそれが好きじゃないのだけど、まあ、別に文句を付ける所じゃないと思えるようになった。これもライブという場でのコミュニケーションなんだろう。だけど、ソロの途中で声を出すのは勘弁。演奏者の知人か関係者か取り巻きか知らんけど、やたらと変な声で「Yeah!!」「Hoo!!」とうるさい連中がいて興が削がれる場面が多々あった(こういう連中をYeahooと勝手に命名)。あれってどうにかならんか? オレは楽器の音を聴きに行ったので、演奏を聴いている最中にYeahooの声なんて邪魔で仕方が無い。というか、気持ち悪かった。せめてソロの後に拍手と一緒に声を出すのならまだ我慢出来るけど、昨夜の連中は酷かった。今まで見たライブでワーストぐらいかも。