坂田明Yahhoo!

Jim O'RourkeとのセッションとかPeter BrotzmannとのセッションとかBill Laswellとのセッションとか芳垣安洋とのセッションとか、ここ数年で坂田明が参加したセッションを結構見ている。元々はあまり興味のある対象ではなかったけれど、今では最も好きな演奏者の1人。だけど坂田さん名義というか、坂田さんのユニットのライブは見たことが無い。それならば見ようとシンプルな思考で、昨夜のピットインでのYahhoo!バンドのライブ鑑賞。

アルト・サックスとかクラリネットとか風鈴な音色のベルとか歌とか担当の坂田さんに、ピアノの黒田京子、ベースのバカボン鈴木、ドラムに坂田さんのご子息の坂田学。『おむすび』の面子がこのバンドという事になる。そのアルバムのタイトル曲「おむすび」で演奏開始。個人的にはハイライトな曲が1曲目。やはりColtraneカルテットの演奏に聴こえる。そういうスピリチュアルがこの曲にはある。続けて「My Funny Valentine」、「星めぐりの歌」、「A Good for Nothing」と続き、1stの最後は「貝殻節」。ジャズ・スタンダードあり歌ありの展開。2ndはドラムレスなトリオ(多分これはmiiというユニットという事になるはず)の演奏からはじまり、坂田Jrを加えたカルテットに戻ってまるでナベサダが演奏しそうな曲(タコがどうのこうの言っていたので「Viva Octopus」という曲だと思う)が始まる。ここでの終盤、坂田Jrの長尺なドラム・ソロ。パーカッション的な音で、リズミックに跳ねる。もしスタンディングなライブなら客も跳ねまくっていたと思う。坂田Jrはしなやかに叩くタイプだと思った。2世タレントはイマイチだけど、2世ミュージシャンはなかなかいいという事かも。 次の曲も勝手にColtraneカルテットを想像してしまうタイプもので、ここではこの日最も熱の上がった坂田さんの音が炸裂。白熱。そして坂田節の冴える「死んだ男の残したものは」、『ひまわり』のタイトル曲「ひまわり」で本編終了。アンコールは2曲あり、まず「Memories of You」、そして「皆が家に帰りたくなるような曲」と言って「Going Home」。オレはこの曲のAlbert Aylerの演奏が好きで(DIWからリリースされていた『Swing Low Sweet Spiritual』、或いはその後タイトルを変えて再発された『Going Home』に収録されている)、いつかオレが死んでしまった時、もしそれに付随する葬儀らしきものがあったらAylerの「Going Home」を流して欲しいと思っているのだけど、坂田さんのバージョンが録音物としてあれば続けて流して欲しい。とか思わせる演奏だった。




黒田さんの名前はフリー系のジャズピアニストとして知っていた。黒田さんの音の入っている録音物は斎藤徹の『Stone Out』ぐらいしかなく、それでもいつかライブで音を聴いてみたいと思っていた。今回こうやってその機会を得た。バッキング時にはそれなりの音で演奏をしているけれど、坂田さんが吹き終わってトリオになるとガツガツくる。でも必要以上じゃなく、品が良い。なんか変な表現。バカボンも何度かその名は目にしていた(名前が名前だけに1度目にすれば記憶に残りやすいという事もある)。名前からは想像しにくい渋いベースを聴かせ、こういう音にジャズ好きは抗えない。

最初に書いたように、オレが今まで見た坂田さんの演奏はフリーなセッションばかりだった。だけど昨夜はジャズの演奏も多く、そういう演奏も凄く良くて、坂田さんの懐の深さを今更思い知る。