Steve Reich

チャンピオンズ・リーグの決勝を見ながら、テクニックについて考える。クリスティアーノ・ロナウドは、現在最も優れたテクニックを持った攻撃的なサッカープレイヤー。多分彼のキャリアにおいて今シーズンは頂点。攻撃の為のテクニック、ドリブル、スピード、フェイント、シュート、長短のパス、プレース・キック、そしてヘディングまでも文句なしの技として保持されている。だけどこの人も、やはりスペースが有る無しで変わってしまう。前半は鋭い動きをしていたのに、後半は消えてしまった印象。いくら優れた技術を持っていても、それを生かす場面が無ければ何にもならない。それに比べてチェルシードログバ。決定的な場面は少なかったけれど、その強靭な肉体を活かした体を張ったプレーは随所で効果的なプレーになり、ロナウドとは全く違うタイプだけど、試合全体での印象はドログバの方に分があった。

演奏上のテクニックと言うものの判断は、その楽器を扱ったことが無ければ印象でその事を感じるしかない。ギターという最も普及したと思われる楽器において、へヴィメタ的なものを揶揄する場合に使われる「速く弾けばいいってもんじゃない」という言葉、確かにそれはその通りだけど、速く弾けるというのもそれはスピードのあるドリブルと同じで、一つの大きなテクニックでもある。そしてそれは、ギターを弾かない人にでも、すぐに判断の出来るテクニックであり、そういった面でのアッピール度は高いもの。

Reichの曲が難曲なのかどうかオレにはわからないのだけど、派手な指使いが出来なければ弾けないという類のものでは無い様に思える。でも、昨日今日と「Music for 18 Musicians」を聴いて、ここでの4人のマリンバ奏者は気が狂いそうになるんじゃないかと思った。交代しながらの演奏だけど、延々と同じテンポで叩き続ける奏者を見ていて、この人達はフォワードで言えばドログバの様であり、ポジションで言えばセンターバックの様な存在。あまり憧れられる存在ではないという事を言いたいのだけど、この人がいなければ成り立たない。

火曜にDoudou N'Diaye Rose Percussion Orchestraを聴いたことによって、結果的にアフリカのパーカッションとそれの知識的な解釈である「Drumming」を短い間に聴ける事になった。Reichを含む4人のパーカッション奏者が譜面も無しでリズムを叩き出す様は、Doudou達の持つ土着的であるが故にエンターテイメントを伴った躍動とは違い、捕らわれるものの無い音として響く。これが今日の最初の演奏だったのだけど、Part1のみでなく、やはりフルで演奏されるものが聴きたくなる。

「Proverb」は、女声とシンセが聴かせるどうしようもない程の調和が、この曲の全てだと思う。神秘的とも言えるこの曲は、小品だと思って今まであまり気に留めていなかったオレに、Reichの作る曲はその長さで価値が変わるものではないという事を今更わからせてくれた。

もう1度「Music for 18 Musicians」。コンサートという場でこの曲を聴いて、マリンバ奏者への負担が目に付くと共に、ヴォーカルというかヴォイスのパフォーマンスにも圧倒される。Synergy Vocalsの歌うという以外の発声の作業があったからこそ、昨夜今夜と同じ曲を聴いても集中力が途切れなかった。