Nik Bartsch Solo Piano with Imre Thormann

オレは飛行機に乗る事が苦手。離陸から飛行が安定するまでは、なんでもないフリして手に汗を握っている。だからなるべく飛行機に乗る機会を作らない。だけど乗らなければいけない状態になる事もある。そして、飛行機に乗るまでの時間に飛行場をウロウロしていて、今更気づいた。オレは飛行場という場所もかなり苦手。どこの飛行場も、なんとなく同一のトーンで、騒いでいるやつらを見るほど妙に空しいモノを感じる。と、全く音楽と関係ないことを思いながら今夜はピットインに足を向けた。『Nik Bartsch Solo Piano with Imre Thormann』というタイトルのライブ。1stがNik Bartschのソロで、2ndはBartschとImre Thormannという舞踏家によるパフォーマンス。BartschのRoninでのライブは見れなかったので、この機会は外さなかった。

時々驚く事があるけれど、今夜もまたしても驚く。オレの記憶で、ピットインがこんなに女性が多かった事は無い。しかも、ピットインで見るタイプの女性ではない人が多い。「Bartschってこんなに女性ファンがいるのか?」と驚いた。だけどそれは間違い。今夜のピットインで見かけないタイプの人達は、Thormann目当て。Thormannに対しては当然のように予備知識ゼロ。なんか、イケメンがコンテンポラリーダンスでもやるのだろうか?などと想像。

そんなこんなで1st。Bartschのソロ演奏。BartschはRoninしか聴いてないので、ソロではどういう演奏をするのかわからなかった。なんとなく即興的なものを想像していたけれど、書かれた曲を演奏。アドリブ的なものは見当たらない。『Holon』に入っている曲も演奏された(多分「Modul 42」)。音のタッチは丹精且つ繊細で、Roninというバンドでないからか、これを聴いてジャズだとは思ったりはしない。3曲目に演奏されたものなんかは、何も知らずに聴けばオレはReichだと思ったと思う。

今夜は普段の1列目が撤去されていて、さらに2ndでは今夜の1列目を横に移動させ、ステージ前が広い状態になった。1stではステージ中央にあったピアノも後方の片隅に移動され、暗転してBartschがピアノの前の椅子に座る。だけど演奏が始まらない。と思っていたら、周りが客席後方に視線を持って行ってる。何だと思って見ると、Thormannがかなり遅いペースでステージに向かって歩いている。黒いパンツで上半身は裸。だけど白塗り。前衛舞踏とか、暗黒系とか、そういうやつ。ちょっと引きつるオレ。映像でこの手のものを見たことはあるけれど、あまり興味が持てるものじゃなかったのに、まさかそれをよりによってピットインで目にするとは・・・。だけど偏見はイケナイと勉強したばかりなので、キッチリ見届ける事に。

まず、なによりも顔の表情の変化が印象に残る。舞台役者の様に、睨みつけたり至福の表情であったり、色々な表情を浮かべる。必要以上に作り上げていない肉体の表面にも動きを感じる。ハッキリ言って、全体として何を表しているのかはオレにま全くわからなかったけれど、異形を表現しているかのような場面は忘れ難い。

Bartschは間引いた音(『Holon』の曲をこの舞台向けにアレンジしたもの)でThormannの動きの演出。必ずしも音と動きが呼応しているわけではなく、その辺はこの2人のセンスなのだと思う。




1st、2ndともに、今まであまりライブでは見た事のないものだったので、どちらも面白かった。だけどどちらかといえば、やはりBartschがオレには収穫。Roninというバンドスタイルのみならず、ソロでもミニマル的な音を扱うとは思わなかったし、それが個人的には好みといえるものだった。そして、Bartschのあの格好。あれ、ニッカポッカだよな? Ronin=浪人という事からわかるように、Bartschは日本の文化に興味を持っているようだけど、ニッカポッカまで取り入れたか。ミニマルなピアノを弾くとび職。だれか注意してやれ。