架空線上の音楽

今では日本のアヴァンギャルドな音楽を上手く伝えるレーベルがいくつか存在するけれど、90年代初頭まではレーベルとしてそれをやっているのはあまりあまりなかった。それを打開したのがGod Mountainだったと思う。このレーベルからAltered Statesがリリースされ、Ground Zeroがリリースされ、高円寺百景やOpitical 8、Kirihitoがあり、さらにコンピにはDoomまでもが収録されていた。
そのGod Mountainから『架空線上の音楽』というCDがリリースされていたのは知っていて、その時に興味はあったけど、手にはしてない(と思う。探したら持ってたって可能性もあるが・・・)。手にはしなかったけれど興味を持ったのはそのタイトル。『架空線上の音楽』なんて、個人的にはやけにカッコよく思える。スーパーデラックスでその『架空線上の音楽』のライブがある事を知り、またしてもSDLXへ行く事になった。
予約していたので受付で当日より安い料金を支払うと、CDRが手渡されなんとなくギョッとする。ライブの予約特典らしい。支払った金額は当日券の人より安いのに、得した気分。客席は疎ら。多分20人ぐらい。
20:30から演奏開始。左からいくつかの管楽器を扱うAndy Bevan、ヴァイオリンの工藤美穂と越川歩、ヴィオラの小原直子、チェロの井上とも子、7弦ギターの山田や〜そ裕、リーダーでベースとエレクトロニクスの沢田穣治、クラリネットバスクラ梅津和時。この8人がR状に並ぶ。ここで気が付く。ドラムもパーカッションもいない・・・。8人もいて、それがいない。となると、必然的にそういう音楽になる。擦弦楽器が半分もいて、ギターとベースもいるのだから弦楽器だらけ。室内楽的な音。そして完全にスコアされた音楽。
一時期流行った癒し系といってもいい音だけど、漂うだけではなくて、リズミックな展開もある。全ての音が優しく丹念で、まあ、やはり癒される。
どの音もとにかく綺麗な音だと思った。品があるけれど、よそ行きではなくて、ちゃんと音が入り込んでくる。
そして、視覚的な事も考えてか、タカダアキコというダンサーが登場する。オレはこういうやり方にあまり好意的なタイプじゃないけれど、昨夜のパフォーマンスは色々と引きつけるものがあった。彼女が踊るという事、それで表現するという事を目の当りにして、オレの偏見を見直す機会になった。
セットの構成としては、約2時間で3セットというやり方。だけどセット間にミュージシャンが退場するわけではなく、沢田が演奏された曲の説明とこの後演奏する曲の説明をするだけで、見ている方としては、セット間は無かったとも言える。でも、こういうやり方もあるんだなと思った。ジャズ式の、セット間はミュージシャンが下がって休憩をとるというやり方も(いろんな意味で)古の知恵なのだろうけれど、昨夜のやり方は時間も圧縮されるし、間延びしない。