El-Malo

どうも最近、昔渋谷系と言っていた辺りが少し騒がしい。昨年MMの10月号で渋谷系を振り返るような特集があった時にはなんとも思わなかったけれど、小西康陽渋谷系コンパイルしたものを最近リリースしたようで、その辺もひっくるめてなんとなく色々考えたりする。

渋谷系を簡単に要約してしまえば、新旧の音楽(主に欧米のポップス)を一度同列に並べて、聴いたり演奏したり曲を作ったりするという作業に、下北辺りでディスコからクラブへの移行が行われていく動きも含めて、渋谷系だったと思う。

象徴的なミュージシャンは色々いた。中心的に語られるのはピチカート・ファイヴフリッパーズ・ギター。だけどオレはどちらも聴いていない。もちろん耳にしたことはあるけれど、オレが受け付けられる類の音ではなかった。そんなオレにとって渋谷系という言葉ですぐに思い出すのはカヒミ・・・、では無くてLove Tambourines。このバンドの解散と、渋谷系という言葉が使われなくなったのはリンクしていると思う。そのLove TambourinesのEllieの歌声はくどい。今のオレなら消化不良間違いなし。だけど圧倒的なヴォーカリストだった。日本(?)の女性シンガーで、Ellieほどの歌唱を聴かせたのは他にいないと思える。



そんなこんなでEl-Malo。ButchersとかMadを最近聴きなおしているのは、実はEl-Maloのせい。直接的には関係ないけれど、あの頃自分が聴いていたものとして、オレにとってはリンクがある。

El-Maloは「渋谷系の裏番長」と呼ばれていたらしい。「らしい」が付くのはEl-Malo渋谷系と見なしてはいたけれど、そんな呼び方をしていた記憶が無いからで、まあとにかく、そういう呼称が使われるところからわかるように、El-Maloは他の渋谷系とは少し違った立ち位置にいるように思えた。他の渋谷系は、掘り起こしてきたものをそのままやってしまっている感じだったけれど、El-Maloは見つけてきたものを未整理なまま混ぜ込んでいく。手法としてはミクスチャーだけど、ベースになっているものが見つからずにとっ散らかっている。だけど不思議と、ちゃんと楽曲として収まっている。そのEl-Maloも、最も世評の高い『Super Heart Gnome』以降、CDのリリースが途絶える(音源のリリースという意味では『New Paradium』がある)。既に活動停止しているのだろうと思っていたのだけど、4/2、電気グルーヴの新作『J-Pop』と買うかどうか店頭で悩もうと思いレコファンへ。ディスプレイされている『J-Pop』を手に取り悩んでとりあえず棚に戻す。その並びには木村カエラ青山テルマの新作。新作コーナーを離れ、ミュージシャン毎の仕切りを見ていると、El-Maloの新譜『Noface Butt 2 Eyes』を見つけてしまう。「なんだかな」なジャケットがEl-Maloらしい。ニヤつく。レジに持っていく。電グルの事は帰宅するまで忘れてしまった・・・。

『Noface Butt 2 Eyes』はこれまでと同じEl-Malo。相変わらずやりたい放題ぶち込みっぱなし。10年前から変わっていない。派手に音が鳴るのにヘヴィーさは微塵も無い。この新作はメロディーまでどこかから持ってきてしまったって感じだけど、ここまでやってくれれば清々しい。個人的な2008年のベストに入る事間違いなし。









El-Malo 『Noface Butt 2 Eyes』




結局電グル『J-Pop』は手にしていない。でも、電グルカエラの作品が同じ日に発売され、その少し前に『Noface Butt 2 Eyes』がリリースされていた事って、偶然なんだろうけれど、意図的に見えなくもない。



『New Paradium』はイヤらしい書き方になったけれど、CCCDだったのでシカトしたという事。あのアルバムが出たとき、欲しかったけれどCCCDであるという理由で手にしなかった。CDとしてリリースしなおしてくれれば手に出来るけれど、そうならないうちはオレにとって『Noface Butt 2 Eyes』は『Super Heart Gnome』以来のものという事になる。久々に初期のものを聴き直すと、1st2ndはロックというには少しずれた感じで、『III』で今のEl-Maloが出来上がったと思える。個人的には『Super Heart Gnome』よりも『III』の方が好きだったのだけど、『Noface Butt 2 Eyes』はそれを上回りそうな感じがしている。