井野信義 / 今井和雄 / 山崎比呂志

2日前が今月初と言っていたのに、今日で今月3本目のライブ鑑賞。しかも3日連続のピットイン。でも今日は昼の部。天候のいい土曜の午後、新宿。かなり苦手。ダラダラ歩く人達の波が苦手。この殆どが買い物という目的の為に新宿に集結している。なんか不健康じゃないですか? とか考えながらピットインに到着。地下に潜る。暗い。人が少ない。落ち着く。健全。

前日前々日の夜の部と比べるとかなりスカスカな客席。だけどこの3つのライブは同価値。

目的はとにかく今井和雄のギターを堪能する事だった。日ごとに今井の音を浴びるように聴きたいという欲求が高まっていた。だけどオレの行きにくいところでのライブが多く、なかなかライブに接する事が出来なかったけれど、ピットインでトリオ編成という、願っていたシチュエーション。ベースは今日のライブのリーダー井野信義、そしてドラムは山崎比呂志。ライブ冒頭で井野が語っていたように、3人とも高柳昌行と所縁の深い人達。

情報過多なギタリスト、或いはオーバーフローしそうなギタリストとも言い換えられる。今井はそういうギターを弾く。圧倒的なギターの存在感。アヴァンギャルド。引きつった音が敷き詰められる。今までそれなりにライブという場で優れたギタリストの音を聴いて、それに感情移入してきた。だけど今井のギターはそれを許さず、ただ唖然とそれを聴くしか出来なかった。何かしらのメディアで、今井の名前を強く押すものを今までに目にした覚えが無い。それはそういうところにいる人達の怠慢だとしか思えない。今までオレは、ライブという場でここまで自分の耳が途方に暮れた事は無い。

そんな状態なので、井野と山崎の音に強い印象が残っているものは少ない。だけど、今井の音を引き出したのは間違いなくこの2人。今井を触発し、逆を行う。晩年まで高柳を支え続けた井野は、勝手な推測をさせて貰えば、高柳が最も信頼した奏者であるはず。今日は何度目かのその音を聴く機会で、余裕を感じさせながら今井を誘発する姿が印象的。そして、『La Grima』でオレとしては録音物で唯一圧倒されたドラムを聴かせた山崎は、今日が始めてその音に接する機会だったけれど、『La Grima』の時のような強烈なドラミングとは異なっていても、自分自身の音楽を、立ち止まらせていない音を発していた。

フリージャズだったと思う。そのフリージャズは古くも新しくも無かった。ただ圧倒的に、存在していた。