大友良英 Invisible Songs

大友良英2daysの最終日。『SORA』の発売記念という名目のライブ。大友、山下精一、キーボードの近藤達郎、ベースのナスノミツル、ドラムの芳垣安洋に加えて、ゲスト扱いでONJOとの共演ライブ以来に見る事になった久し振りの浜田真理子、そして現在は韓国在住のサックス奏者Alfred Harthという面子。昨夜も立ち見がいる状況だったけど、今夜はONJO並みに立ち見が大勢。この中には真理子ねーさんだけが目当てという人も多分いるのだろう。

ライブが始まる前、真理子ねーさんの出番はセット毎にせいぜい1〜2曲程度だろうと思っていた。初っ端の演奏でもHarthは出てきたけど、真理子ねーさんは登場しなかった。だけど2曲目でいきなり登場。その後も引っ込んでは出てくるというパターンで、予想以上にその歌を聴く事が出来た。しかも、近藤がキーボード兼ピアノを担当していたので、真理子ねーさんは中央で椅子に座って歌うという状態。普段はピアノの弾き語りというスタイルだというから、こういう真理子ねーさんをそのファン達もあまり見たことが無いんじゃないだろうか? そしてさらに、大友看板のライブなのに2ndの1曲目はなんと真理子ねーさんの弾き語り。歌われた曲はあの「のこされし者のうた」。何のライブに来ているのかわからなくなりそうだった。久しぶりに聴いたその歌声、大げさな歌い方では無いにも関わらず情感あふれるその歌声に文句の付けようが無い。歌謡曲のカバーだけでなく、「Uber den Selbstmord」の様な外国語での歌も披露。元々オレは、英語で歌う真理子ねーさんが好きだったけれど、最近はそういうイメージが無くなっていた。だけど今夜、そういう歌を聴いた事によって、日本語だから伝わっているわけではない事がわかった。いろんな意味で重要な歌い手。

Harthを聴くのも今夜が2度目(だよな?)。DuoでのONJOによる『Out to Lunch』発売記念ライブ以来。あの時はトリッキーさも持った面白いサックス吹きだと思ったけれど、今夜はAylerを思わせる音の響きが印象的。昨年、Harthの来日公演があった時は無視してしまったのだけど、今夜の演奏を聴いてそれに足を向けなかった事を後悔。次の機会を待つ。

フロントにギターが2人、歌い手1人、サックス1人という状態では、リズム隊は音楽の基盤を支える事が重要。だからナスノはグルーヴはかもし出しつつも、いつものような強烈にカッコいいフレーズはあまり出てこず、芳垣も前面には出てこない。キッチリ音楽を支えている印象だった。でも、芳垣はトランペット吹いたり、本編最後の「At Last I'm Free」では歌ったりしてたけど。

近藤はキーボードの時はあまり印象が強くなかったけれど、ピアノの音がカオスな音の中でもハッキリと聴き取る事が出来て、しかもその音が浮かび上がってくる瞬間が、個人的には今夜のライブで最も好きな時間だった。今、この人の音をもっと聴きたいという願望がかなり強い状態になっている。

そして実はSachiko Mがもう1人のゲストとして登場。数曲の演奏に加わり、あの音を微かに響かせる。この音も、音が溢れる状態でもキッチリ認識させる音として存在してしまう。

大友と山本については、あえていいか、と。今夜は大友のリード・ヴォーカルの披露は無かったし。でも山本の歌う「SORA」はモロに想い出波止場だったな。それと、Novo Tonoの曲を真理子ねーさんと歌っていて、なんか得した気分になった。



コテコテ書いた割には、それでも結構端折ってしまった内容になってしまった。とにかく、色んな方向から音楽を聴く事が可能なユニットだと思う。大友はこのユニットを今後も続けていくつもりらしいけれど、単に続けるのではなく、ONJOに並ぶ重要なユニットになる可能性もあるんじゃないかと思った。YCAMのこのユニットのライブではカヒミやJim O'Rourkeもフィーチャーするらしいし、プレ・ユニットだった昨年のライブではかわいしのぶもヴォーカルとしての参加だった。今までの大友の人脈を考えれば、さがゆきさんや、そしてPhewを呼ぶ事も可能なんじゃないだろうか? さらに、Reckをあえてヴォーカルとして加えてみるとか・・・。あ、Eyeも・・・。まあ、色々夢想はしてしまうけれど、どれも決して不可能じゃないはずだし、今までには関係のなかった人達と徐々につながって行っても面白いと思う。でも、昨日の投稿では「笑った」と書いたけれど、大友自身が歌うという事もやったほうがいいと思う。自分で自分のために歌う曲を書いてみたらいいんじゃないだろうか? 歌っていけば多少はうまくなるはずだし、それによって他人に提供する曲を書く時に、何かのプラスになるような気がする。大友が今後必ず、このユニットでのライブ時には1曲歌うというテーマを持って臨むとさらに面白いんだけどな。




オレは今夜はギリギリ座れたけれど、ONJOの時並みの客入りだったので、後方の立ち見な人達はかなりつらかったと思う。これだけの客が入ってしまうとピットインには向いていない。恐らく大友はピットインに多大な義理があるだろうし、だから少しでも客の入るライブをやることによってピットインに貢献したいのだと思うけれど、何度も書いている様に、常連だけではなく、今夜が初めての大友のライブという人もそれなりにいるはず。ブログで「ライブに来てくれ」と訴えるならば、常連の客だけではなくて、初めて来てくれた客に「また来たい」と思わせる事を音楽の力だけでは無い面で必要がある。その事は本人も認識しているようで、「混んでいるから休憩時間を短くした」というような事を言っていた。真理子ねーさんのソロ演奏というのは、その為の策でもあったのだと思うけど、それは正しい選択だった。

MCで言っていた「1列目が20年ぐらいいつも同じ」というネタは笑えるけれど、笑えないネタでもある。カヒミや真理子ねーさんとの関わりによって、アヴァンを全く知らない人達にでも大友良英を認識させる状況が出来つつある。そして日本と海外の優れた演奏者たちとのパイプ役も担っているし、インプロヴァイザーとして、コンポーザーとして、バンドリーダーとして、やることは多々あるだろう。体が2つ3つ欲しい状態である事はファンという立場で見ていてもよくわかる。でも既に、大友良英は代えのきかない存在になっている。だから求めるものは多大になる。本当は側近にそういう事を考える人いればいいのだと思うけれど、でも結局大友という人は、自分で全部やってしまうタイプなのだろうとも思う。

いつも大友良英の事については批判的な面も持つ事にしている。単に音楽の部分だけを考えてみれば、オレ個人としては全く問題が無い。だから下手をすると盲目になってしまう可能性がある。だけど他の人には不可能な事をやっていても何か要求を持つ事で、信者になる事を避ける事にしている。あまりいいやり方じゃないけれど、他に方法が思いつかない。