iLL

一昨年のナスノミツルとのセッションや、昨年リリースされた勝井祐二との『Dawn』で、なんとなく気になっていたiLL。元々やっていたらしいスーパーカーというバンドは全然聴いていなかったので、個人的には正体不明だった。ソロになってからの1stアルバムはリリース済みだったけれど、なんとなく手に取れずにいた。そして3月にリリースされた『Dead Wonderland』。なんとなく気になっていたという程度なのでリリース情報を持っていたわけじゃなく、タイミングよくレコファン店頭で見つけてレジに持っていく事になった。

「歌う人だったか」というのが最初の感想。ナスノとのセッションでの引きつったようなギターの音や、『Dawn』での整理された音の扱いを聴いて完全にインストな人だと思っていた。けれど彼にとっては歌うという事も重要なファクターらしい。個人的には歌声そのものに魅力は感じないのだけど、無理をした歌い方ではないので悪い印象もない。歌われる内容に、特に意味が無いところもこういう人には向いている。音そのものは、フォーキーな感触が強く、全編にわたって参加しているヴァイオリン(勝井)やチェロとの相性もいい(ちなみに2曲目と7曲目のドラムは芳垣安洋)。所々Velvet UndergroundLou Reedの影響があって、というか、『Magic and Loss』に入っていてもおかしくない「Girl」や、「Run Run Run」に「Street Hassle」のテーマを挿入したとしか思えない「Shake Head」には苦笑した。だけど、それが彼の素直な音なのかもしれない。「Derek」というのは多分Derek Baileyの事なのだろうけれど、Baileyに比べれば全然とっつきやすいのも人柄なのだろう。

まあLou ReedファンでありDerek Baileyファンであるオレとしては指摘せざるを得ないものがあるアルバムだけど、全体的には毒気の薄い柔らかい音で、この季節の休日、13:00〜15:00辺りに聴くには心地良い。









iLL 『Dead Wonderland』