Teo Macero

一時期流行ったカリスマ美容師や、『シザーハンズ』のジョニー・デップも歯が立たないハサミの使い手がTeo Macero。

そのTeoが2/19に逝去したという事を知って、哀悼の意をこめて聴く事にしたのはMiles Davisの『A Tribute to Jack Johnson』。選んだのが『In a Silent Way』じゃなく『On the Corner』でも無かったのは、オレがMilesの作品で『ATtJJ』が最も好きだからという理由ではなく、このアルバムの解説(ジャケットに書いてある)でMilesが「Teoがまたやってくれた!!」というような事を書いてあったからで、その印象が強かったから『ATtJJ』がTeoの送別にふさわしい気がした。

そして久しぶりにTeoのアルバムである『Teo』も耳にする。これはKip HanrahanのAmerican Claveからリリースされたもので、正直言えばTeoのアルバムだからというより、American Claveからリリースされたものは全部買うという事を決めていたから手にしたもの。正確なリリース時期はわからないのだけど、多分80年代初頭ぐらいじゃないだろうか? でも、この作品集はその時に録られたものではなく、53年と57年に録音されたもので、時代はハード・バップ。だけどそういう音のイメージと違い、確かにジャズではあるのだけど、ハード・バップとは違う印象。ジャズ特有のグルーヴが無く、ウエスト・コーストのジャズとも違う。これはいったい何?と思っていると、「Adventure」以降の曲の管楽器の響きを聴いて、オレが殆ど耳にしていないサード・ストリームなジャズであると気がついた。クラシックとジャズの融合を狙ったサード・ストリーム。Dolphyの録音したものの中にそういう音が少しあって、それしか耳にした事が無かったけれど、この『Teo』は、そういうものだと思う。この手の管楽器の響きが苦手で、現代音楽でも管楽器入りだとなるべく避けているのだけど、American Claveの作品でそういう音を聴く事になるのは想定外。という事で、『Teo』は面白い作品だとは思わない。だけど、時代の徒花となってしまったサード・ストリームを1度耳にしてみたいのなら、経験という意味ではいいのだろう。それにKip Hanrahanはこれを面白いと思ったんだよな。Hanrahanの関わったどの作品とも違うこういう音を好むとは、なんとなく変な感じだけど、彼の音の要素の1つにこういうモノが隠れているのかもしれない。



話がずれたけれど、とにかくTeoという稀有のハサミ使いのその功績はMilesの作品で確認できる。TeoなくしてMilesは現在まで影響力のある作品は作れなかったはず。それを思えば、Milesの作品を気に入っているならば、Milesを称えるのと近い感覚で、Teoの功績にも賛辞を送る必要がある。



R.I.P. Teo









Teo Macero 『Teo』