坂田明

坂田明の単独名義のアルバムを買ったのは結構久しぶり。多分『Fisherman's.com』以来だけど、その『Fisherman's.com』は特殊な面子だったけれど、『おむすび』は現在の坂田さんのレギュラー・カルテットと思われるYahhoo!による作品。

この作品は、日本チェルノブイリ連帯基金というNPO法人がつくった「がんばらないレーベル」からリリースされている(第1弾として『ひまわり』がリリースされている)。このCDの売り上げはチェルノブイリ原発事故による放射性物質汚染によって、健康を害してしまった子供たちを救う為に使われるらしい。こういう事に関わる坂田さんに敬意を抱く。

といっても、それと音楽の評価は関係ない。『おむすび』を手にしたのもチャリティーのものだからではなく、ライブでの坂田さんの音に魅了されたから。



1曲目に配された、このアルバムのタイトル曲である「おむすび」が最も惹かれる楽曲。『A Love Supreme』で到達したJohn Coltraneのスピリチュアルな音を継承したと思える曲。黒田京子さんのピアノはMcCoy Tynerであり、バカボン鈴木のベースはJimmy Garrisonであり、坂田学のドラムはElvin Jones、そういう風に聴こえる。もちろん坂田さんのサックスはColtrane。アルトを吹いているはずなのに、太い音色。神秘的に響く。

2曲目の「My Funny Valentine」と5曲目の「Memories of You」はジャジーでムーディーな演奏。黒田さんの歌も聴ける3曲目の「星めぐりの歌」と、坂田節の聴ける4曲目の「死んだ男の残したものは」は、日本ならではの歌曲を取り上げたもので、誠実な内容。そして最後に「おむすび」の別バージョンを収録。終盤に向けて激しさを増す1曲目のようなインパクトは無いけれど、漂うようなバックの音の中で歌い続ける坂田さんのサックスは、深遠を歌っていると思う。









坂田明 『おむすび』




日本チェルノブイリ連帯基金のHPに行くと、あの事故から今日で8001日目だという事がわかる。あれから20年以上も経っている。20年経っても爪痕が消えていないという事実が物語る事を考える。考える事はいくらでもあるけれど、結論は出ない。