芳垣安洋EG4

昨夜は色々思うことを抱えながらピットインに足を向ける。芳垣安洋EG4は、リーダーの芳垣とベースの船戸博史のリズム隊に、大友良英と斉藤”社長”良一という2人のヤバイギタリストという面子。要するにEmergency!のベースを水谷浩章から船戸に変更したバンド。オレは社長はEmergency!でしか聴く機会が無いし、大友のヤバイ演奏を聴く機会も今年は昨夜が初。オレの色々思うことを「まあ、いいか」という気持ちに変えてくれる事を期待。

肩慣らしの1曲目は「Comme A La Radio」。だけど既に肩はこなれていて、ガツガツと熱を上げる。2曲目はCharles Mingusの曲(タイトルがわからないけど、Emergency!ではよくやる曲)。続く3曲目はフリーインプロ的な演奏で幕を開ける。こういう音が好きなオレは、それでもこのバンド(Emergency!じゃないけどな)の性格上、絶対に曲に移るはずだと思いながら音を追う。すると一瞬、社長のギターが聴き覚えのある音を発する。それを聴いて「Inflated Tear」になると気付く。そして予想通りの展開。社長のギターがあの印象的なテーマを発する。この曲が大好きなオレは体温が上がる。そして社長のテーマを受けて、大友がセカンド・テーマを弾く。ギターの音の違いが良い。そして当然熱っぽい演奏が繰り広げられる。1stの締めはBurt Bacharachの「I Say a Little Prayer」。まるでBacharachが来日したから選曲したかのようなMCっぷりだったけど、「いつもやってるじゃん」と、脳内突っ込み。

2ndはMingusの「Fables of Faubus」から始まる。あの曲のコール・アンド・レスポンス部分を2人のギタリストがやるわけで、強烈な対話になる。続いてDon Cherryの「Mafty」。昨夜のライブで唯一オレの知らなかった曲。この曲の演奏でトラブル発生。社長のギターの弦が切れた。それは以前にも見たことあったけれど、今回はその後がまずかった。「Mafty」は普段演奏していないようで、だから完全に譜面頼りなのだけど、弦を張り直している間に社長は迷子になった。全然演奏に入れず苦しんでいた。見るに見かねて芳垣がスティックで大体のところを指す。で、なんとか演奏に戻れていた・・・。そして「Lonely Woman」。昨夜、最も耳が惹かれたのはこの演奏。この演奏のイントロのベースの部分の船戸のベースがカッコよく、それだけでこの演奏が昨夜のベストになると気がつく。とにかく壮絶。もちろんかなりインプロが演奏の比重を占めていたけれど、それでも不思議と「Lonely Woman」である事から外れない。芳垣の半端無い叩きも炸裂。最近はこの人からパワーヒッターというイメージはなくなっていたけれど、あれを聴いてしまうとPNLにも負けない叩きを持っていると思わせる。その叩きに煽られて、行くところまで行くギターの2人。そして、それまでどんな場面でも終始ニコニコしていた船戸まで、熱の上がった表情が出てくる。

本編ラストは「At Last I'm Free」。サビを繰り返し歌う芳垣。グルーヴィー。アンコールは「Mood Indigo」で、ライブの熱を冷ますように演奏が終わった。



で、オレはもちろん、「まあ、いいか」という気持ちになった。




昨夜のライブで初めて音を聴いたの船戸博史。ふちがみとふなとの船戸。ふちがみとふなとの名前は知っていたけれど、音は全く聴いた事がない。そもそも歌モノのユニットのはずだから、船戸という人がこういう演奏をする人だとは微塵も思っていなかった。だけど、これだけの面子を支えつつ、「Lonely Woman」のイントロの印象はかなり強く残ったし、興味深い気持ちを持った。演奏中、終始笑顔なのも好印象。ふちがみとふなとを聴いてみようという気分。というか、これからネットでオーダーする。