サンヘドリン × 勝井祐二

今月のライブ鑑賞の予定は終わり、と決めていても、まだその月に1週間も残りがあると、結局どうしようか?と思っていたものに足を向けてしまう。という事で昨夜もスーパーデラックスへ。別に東京エールが飲みたくて向かうわけじゃない(いや、多少は関係しているかも・・・)。サンヘドリンのライブ。サンヘドリンは、灰野敬二吉田達也ナスノミツルというトリオ編成のバンド。まだ録音物は出ていないんじゃないだろうか? だけど灰野と吉田のデュオでのCDは出ていて、初めて『水が炎を掴むまで』が出た時には少し驚いた。というのも、灰野と吉田のキャラクターの違いを考えると共演するとは思えなかったからで、サンヘドリンというバンドになっても未だに少し違和感がある。しかもそこに加わるベースがナスノ。なんか灰野とナスノが並び立つ図というのが想像しにくい。でも、ミュージシャンとして優れた面子なわけで、だからこそ余計に興味は大きくなる。さらに昨夜はゲストで勝井祐二が加わる。足を向けるには十二分な材料が揃った。

ゲストとは言っても『サンヘドリン × 勝井祐二』という看板だから、勝井も1stの頭から演奏に加わる。その勝井のヴァイオリンと灰野のギターが音を敷き詰めたり、消したりしながら演奏は進む。吉田のドラムは、その音にかき消されて聴き取りづらい事も多々あり、特にバスドラやタムは厳しかった。それぐらい上モノとして灰野と勝井の音が自由方便だった。でも、それを単にフリーキーなモノにさせなかったはナスノのベース。これはナスノならではと言いたい。攻撃的な音も多かったけれど、でも音はグルーヴしている。2ndも通じて、昨夜最も印象的だったのはナスノだった。1stは基本的に上げて落としての繰返しで、刺激的ではあったけれど、正直言うと終盤は眠気も襲ってきた。音がでかくてある程度の周期を持ったものを聴いていると、眠気が襲ってくる事はたまにある。1stの最後10分ぐらいはまどろんだ様な状態で音を聴いていて、でも、それは気持ち良かったりする。

2ndは灰野がフルートを持って登場。フルートまで扱う人だったかと、またしても軽く驚く。但しそのフルートは冒頭で少し使っただけでお役御免。灰野は声を使ったパフォーマンスに移る。あまり力まず絶叫せずのパフォーマンス。そして多分エレアコ構造と思われる三味線を使う。音の扱い方があれなので、らしい音もあるけれど、3本弦のアコギだと思っても問題ない。最初はアコースティックな音で扱いながら、途中でエフェクターを通した音に変わる。この音の変化に引き付けられる。徐々に音は壮絶になり、エレキを使っているのと変わらない印象が来る。音が敷き詰められた状態が続き、どうするのかと思っていたら、ヴォーカルによるパフォーマンスに変わる。1stでもヴォーカルを使っていた吉田とナスノまで加わる。多分灰野はサンプラーも使っていた。このパートは美しいという口に出すのは恥ずかしい言葉を印象として使う。

アンコール。ナスノが得意のおとぼけなMCをちょろっとすると、それを断ち切るように灰野がギターを弾くアクション。遅れずに他の3人も音を出す。短い演奏だったけれど、圧縮された音が凄まじく、完璧なエンディングだった。




すみません、サンヘドリンは『満場一致は無効』というCDをリリースしているようです。

これまであまりライブに接してこなかった灰野だけど、この間のHanとのセッションと昨夜の演奏で、やはりこの人の音は引き付けるものがある事を再確認。CDを聴いているときにはギターにしか興味を持てなかったけれど、実はヴォーカルや打楽器なんかを使ったアプローチも興味深いものである事が大きい収穫。今後、オレが足を運びやすいハコでライブをやる時には足を向けれるようにしようと思う。

そう言えば灰野はPeter Broetzmannとの共演作『進化してゆく恥じらい、或いは加速する原罪』もあるんだよな・・・。今年2回来日する予定のBroetzmannと灰野のライブとか見てみたい・・・。