カヒミ・カリィ

上野に来たのは何年ぶりかと考える。10年以上前に来た時の記憶はあるのだけど、それ以降はそういう記憶が無い。その上野で、昨夜目指したのは東京文化会館。アウェーの感触。でも怯まずに向かう。一度道を間違えかけたけれど、すぐに察知して修正。恐らくタイムロスは2分程度。これぐらいは想定内。

小ホールという方が昨夜のカヒミ・カリィのコンサートの場。それでも600人以上入るし、椅子の配置も多目的ホールに比べれば考慮されたもの。内装の雰囲気も悪くなく、全体的に好印象。まあ、その場にオレは場違いな感は否めないけど、ほっといてくれ。

今回のカヒミのライブは小編成という事で、そもそも大友良英のブログでライブを知ったのだから、その大友が参加するのはわかっていたけれど、他の面子は?と思っていたら、多少の予測で今堀恒雄だろうと思い、やはりそうである事が無料のパンフレットでわかった。

3人が入場。中央は勿論カヒミで、客席から見て左に大友、右に今堀。オレから見れば豪華なステージ。普段なら大友も今堀も、もっと至近距離で音を聴けるけれど、演奏者との距離がどういうものであっても特別に感じる事には変わりが無い。

演奏は、2人のギター奏者が同時にギターを弾いたり、どちらかがベースを弾いたりしながら進む。張りの強い音を出すのが大友で、今堀は特にその個性を光らせる様な場面は殆ど無く、丹念に歌伴する姿に、最も優れたギタリストの1人であるものの我は、こういう演奏でもこなしてしまうというところにも感じてしまう。一方の大友は、自身がカヒミの為に書いた曲を幾らか弾いているからか、余裕が感じられる。ライブが始まるまではアコースティックな音のみを使うと思っていたけれど、実際はエレクトリック・ギターも使う演奏で、しかも早い段階で大友のスライドが炸裂するという演奏があった。セッション時の様な行き着くところまでという感じではなかったけれど、その音があのホールの音響に嵌っていて、今まで聴いた大友の音で、最も憂いのある音だった。

実は結構、襟を正して聴く感じのライブだった。それはベース音が無い時にはより強くなり、まるで弱音系のライブの様に、下手に動いて他人の聴覚に影響を与えてはいけないと思うようなもので、若干体が硬直しながら音を聴く。だけど実際に鳴っている音は心地よいもので、この独特の感触は、Joaoのコンサートと同質のもの。

肝心のカヒミ。特に言う事はない。囁くだけで音楽にしてしまうという凄さに圧倒されながらも、彼女の声が生み出す音の心地よさに、音楽の要素として、音色というものが唯一なものであるという事を再認識させられた。