坂田明 / 芳垣安洋

ライブに通い詰めの状態で、とても昨年の半減は難しいような気がしてきた。だけど昨夜は今月最後のライブ鑑賞。ピットインに足を向ける。坂田明芳垣安洋が同じ誕生日らしいので、一緒にライブをやろうという事で企画が立ち上がったらしい。この2人だけでも足が向くけど、そこに吉野弘志、高良久美子、内橋和久、ナスノミツルが加わる。結構豪華。

1stは誕生日の2人に1人ずつゲストが加わり、トリオ形式で演奏。4人のゲストなので4曲演奏。まずはアコースティック・ベースの吉野が加わった、ジャズ的には最もノーマルなワンホーン・トリオと言える編成。で、渋いフリージャズが展開される。フリージャズに渋いという言葉は似合わないかもしれないけれど、でも渋い。昨夜の面子の中でであまり演奏を聴いた事の無いのは吉野の演奏なのだけど、アコベの音はやっぱカッコよく、ピッチカートで2音ぐらいを繰り返したりするだけでそこに意識が向く。坂田さんはフル・スロットルには行かない程度に熱演。この抑えがいい。芳垣もしっかりフリージャズっぽさが出ていて、流石のオールラウンダーぶりを発揮。

2人目のゲストは高良さん。メインは当然ヴィブラホーン。楽器の響きを生かした演奏。楽器の性質上、音は柔らかいけれど、敷き詰められていく音数は半端無いので、演奏の色は高良さんの音を意識させる。そこに芳垣はオレの好きな響きを生かした演奏で色を添え、坂田さんはクラリネットで朗々と進む。

3人目のゲストは内橋和久。ギタリストと紹介されたのにダクソフォンを使った。でもこれ、久々に聴きたかったです。で、あのユーモラスな音が先導。それにどう坂田さんが絡むのかと思ったら、まずは歌というか、ポエトリー・リーディング。民謡調の渋い発声だけど、その内容は・・・。その後アルトに持ち替えていたと思うけれど、残念ながら、ここでの坂田さんと芳垣の演奏はあまり覚えていない。オレはダクソフォンに持っていかれてました。

1stの最後はナスノミツルを加えての演奏。アコベのゲストがいるのにエレクトリック・ベースのナスノも呼ぶあたり、ホストの芳垣の企みの想像をしてしまう(2ndでやはりと思った)。ナスノは珍しくギター的なアプローチの音からはじめる。当然ロックな感触。そこに芳垣が激しく絡む。まさにロック。それをステージ上で後ろに手を組みながら見つめる坂田さん。オレ、坂田さんのこの姿が好きだったりする。誰よりも間近で音楽を楽しんでいるミュージシャンという姿がカッコいいと思う。2人のデュオが白熱して、一旦沸点を迎えた後坂田さんを呼び込むようにアプローチを変える。この辺の演出は流石。自身に比べれば大分若い2人の演奏に触発されて、ここでの坂田さんのアルトは1stで一番熱のある演奏だった。

2ndは坂田さんと芳垣がそれぞれ関わっている(た?)グループに、それぞれを加えるという趣旨。説明が難しい。要するに、Altered States&坂田明と、坂田さんがやっていた何とかというユニットからピアノがマイナスされた状態に芳垣が加わった編成という事。やはり上手く説明できていない気がするけど、まあいい。まずはAS&坂田明。今回の面子を見た時、この演奏があるんじゃないかと思ったけど、本当に実現。オレの記憶違いじゃなければ、ASとしての初めてか2回目の演奏は坂田さんが加わった形だったという事だったと思う。そして、ASが東京に出るキッカケもそうじゃなかったか? 間違ってるかもしれないのであれですが。まあとにかく、ゲスト&ASというのはオレとしては楽しみ。で、やはり演奏は激しくなる。この間のASの演奏と通ずるような明快さ。皆でガシガシいくわけで、これが1セットの中の一つの演奏でしかないのがもったいない。この組合せで是非、一夜のライブが見たい。

続いて何とかと言うユニットのマイナス・・・、めんどくさい。坂田さんと芳垣と吉野と高良さんで演奏。こっちはうって変わって、漂うように音が紡がれる。癒されるような音なわけだけど、高良さんの音に集中すると結構意識が鋭くなる。実は昨夜の個人的なMVPは高良さんだった。彼女の持つ音のセンスも注目するべき。

3曲目はアコベの吉野とエレベのナスノを大きくフィーチャーして演奏。この2人が音を出すところから演奏が始まる。お互いをかなり意識しながらの演奏だけど、息が合い出すとお互いに同じフレーズを重ねたり、バッキングを交代したりして、4本の弦を持つ2人の男の個性が浮き出る。そこに芳垣が小物を使って徐々に絡み、さらに坂田さんが加わる。そして高良さんも加わって、音数は結構な量になる。陰影のある演奏。そして、本編最後は内橋も加わってドッカンドッカン行く。いやあ、これはなかなか壮絶。だけど重々しくない。だから聴いていても疲れない。坂田さんも最後だからか、思いっきり吹き鳴らす。あの、顔を紅潮させての演奏が聴けた。

アンコールは主役の2人でチル・アウトな演奏。多分こういう締め方だろうと思ったし、そうあって欲しいと思ったので、大満足。出てくる音は凄いのに、MCも含めて楽しいライブだった。