吉田達也 / 今堀恒雄 / ナスノミツル

ライブに行く回数を少し落とすつもりでいるので、なんとなく理由をつけて「行きたいけど行かない」と決めたりしている。新作『Dots』の発売記念である吉田達也今堀恒雄のライブに、ライブ限定のナスノミツルをフィーチャーした今夜のライブ、どう考えたって面白いに決まっていたので、こういうライブがあると知ったときには行く事を決めていた。だけど、場所が吉祥寺のMANDA-LA2という事で、オレの行動範囲外だし、前売りもMANDA-LA2まで行かないと手に入らないという事だったので「行きたいけど行かない」と決めていた。だけど今日、そのライブのある日。仕事中も「行きたいけどなあ。我慢しないと」等と考えていた。だけどどうにもあれで、やはり行きたいと思う。でも・・・等と、ウジウジ考える。そしてふと、藪から棒に職場の知人に、「オレはまっすぐ帰ったほうがいいか、ライブに行った方がいいか、どっちがいいと思う?」等と、相手にとっては全くどうでもいいどころか、迷惑な事を尋ねる。「ライブに行けばいいんじゃねーの? ボケ!!」と言われ、背中を押される。その瞬間吉祥寺に向かう事を決め、職場を後にした。

行った記憶の無いハコなので若干不安はあったけれど、無事たどり着く。中に入って、なんとなく来たことがあるような気がするけど思い出せない。それはどうでもいい。シッティングのハコなので、なんとか適当なところに座る。今日選んだビールはコロナ。それをチビチビ飲んでいたら、演奏が始まった。

ナスノはゲスト扱いなので2ndあたりからの登場かと思ったけれど、1stの頭から登場。正直言えばベースの有る無しでの音の違いも聴いてみたかったけれど、まあ、文句をつけるポイントでは無い(1曲だけナスノがオミットの演奏もあった)。3者とも年に数回はライブで音を聴いている人達だけど、今年は今回が初。なので、久々に個性あふれる音が突き刺さる。特に最近は、日本人じゃない人たちや、今まであまり聴いた事のないような人たちの音を聴いていて、それらの新鮮さもあってかなり心揺らいでいたけれど、やはり元々好きな音の持つ魅力は不変。自分のツボをついている音は、飽きない事がよくわかった。

少し冷静に音を拾う。やはり圧縮されたプログレだと思う。テクがどうのこうのというレベルでは無いけれど、曲もとんでもない。ライブ用にアレンジしているという事だけど、それでもこれだけのアイディアが、言ってみればサイド・プロジェクトな場であるはずの場でも、そんな理由で音楽の切り売りをしていないと言わんばかりの仕掛け。こんなのはそうそう聴けない。なんかニヤついてしまう。で、やはりギター好きのオレは今堀を凝視する。変態的に構築されたギターという意味では、この人の右に出るものはいない。あえて並べるとすると、生音は知らないけれどNels Clineぐらいしか浮かばない。譜面を見ながら変態的な曲を弾く。あれが書かれたものだという事にクラクラする。最近、PNLの凄さに心奪われっぱなしだったけれど、日本が誇る変態ドラマーの吉田も流石に耳を引き付ける。そもそも手数というポイントで最初にびっくりさせられたのがこの人。それを再確認させる迫力。音の流れが流麗過ぎて、つながっている様にも聴こえる。というか、フレーズしている。それが吉田の最大の持ち味(だと思う)。エフェクトなども当然のように扱っていたけれど、今夜は、オレは今まであまり聴いた事のないパーカッションなアプローチの音もあって、そういう音も使うのかという個人的な発見もあった。ナスノはまあ、個人的に最も信頼しているベーシストだから、この人の音を聴くのは常に安心。だけど、割と即興な音を聴く事が多いので、今夜のような譜面を追いながらのナスノはあまり見たことが無い。曲が曲なので、今夜はオレの知っている場を作り上げるグルーヴとは違い、ぶつ切りな太い音の印象が強い。で、そういう音もよく嵌っていた。ハードと言いたい音も多々あった。

ナスノを中心とした面白MCも多々あり、背中を押してくれた人に礼を言いたい気分のライブだった。

当然物販で『Dots』を購入。今、それを聴きながらキーボードを叩いている。その『Dots』のインプレはまたそのうちに。