Sten Sandell Trio

今日もなんとか当日投稿。別に慌てる必要は無いのだけど、鮮明な、熱い記憶が残っているうちに一気に、いつものように適当に。寒いから、熱いうちのほうがいいだろうし。
昨夜の演奏を無理やりまとめてみると、ヨーロッパ的というものにとらわれないフリーインプロだったと思う。Sten Sandellの扱うエレクトリックな音は、楽しい音という感触も残っている。オレがここで言うヨーロッパ的なフリーインプロとは、やはりDerek BaileyとかKeith Roweらが残した60年代、70年代の音の事で、あの情け容赦ない感じがオレのヨーロッパフリーの印象。それに比べると、というのが昨夜のSten Sandell Trio。
そして今日のセットはアコースティック主体。衣装が変わる事で音楽がどう変わるのか?と考える。オレの予測は恐らく前夜よりも厳しい音。もしかすると間の多い音になり、Paal Nilssen-Loveの激しいドラミングを期待してくる客には辛いものになる可能性もあるんじゃないだろうか? オレは、、、どっちでもいい。等と思いながらピットインへ向かう。無事に開場前に到着。結構人がいる。月曜は足が向きにくい日なのに、昨夜はお世辞にも大入りと言える状況じゃなかったのに、まあ昨夜は天候の問題もあったのかもしれない、とか考えながら入場。そして開演を待っていた。
余計な話が長い。今夜のこのトリオ、いきなりまとめるとフリージャズな感触が強かった。音数は明らかに今夜の方が多い。そしてなんといってもPNL。昨年何度も見た驚異的なパワフルなドラミングというよりも、とにかくスピード感に圧倒された。手数の多さはわかっていたけれど、それが実は凄く繊細な音の並びであった事が昨夜と今夜の演奏でよくわかった。金物の扱いも、もうこれはPNLの個性という感じで、音の響きを生かすよりもマットな音にしてしまう事、そしてスティックでシンバルを擦る時に、繊細な音を選ばずヒステリックな音を鳴らす事。決してパワフルなだけのドラムではない事が本当によくわかった。壮絶な時間は圧巻。文句無し。
Johan Berthlingはどうしても地味な印象になるけれど、でも、そもそもアコースティック・ベースという楽器はどうしたってそうなってしまうわけで、この楽器に求めるのは、音楽を安定させる事と時折引き付ける音を出す事。今夜はきっちりソロをとる時間があり、それも無伴奏な状態。そこをへたくそなヴァイオリンのような不穏な音のアルコで決めて見せた時は、この人がこのトリオのベースである意味がわかったような気がした。それと、2音3音ぐらいで作るフレーズがカッコいい。
リーダーのSandell、今夜はエレクトリックな音は無し。それでも自らの声も道具として使う。ピアノも叩く。当たり前だけど、前夜と違ってピアノを弾く時間が長い。そのピアノが今夜はフリージャズだったと思わせえる要因。丹念に音を選ぶ場面も多々あるけれど、熱の上がった時の音の運びがフリージャズと思わせる。なんていうか、大陸的というか、懐が広いと言うか、包み込むような感じと言うか、、、スケールがでかいと言ったほうがいいか。内側に差し込むよりも、外に音が出ていた。これはDavid S. Wareを聴いている時に感じるのと同様の、ある種のスピリチュアルな感触。昨夜は左手で選んだ最低音が耳にこびりついたけれど、今夜は右手の高音。もしかしたら最高音かもしれない。なんか「わざとやってるだろ?」と、思ってしまった。
やはり二晩とも行ってよかった。同じ面子で違うスタイルの演奏が聴けるのは楽しい。今夜は客席も寂しい状態にはなっていなかったし、結構皆拍手とかしていて雰囲気もよかった。明後日は、単独ではないけれど京都での演奏があるようなので、関西の方はこの機会を逃す手は無いと思う。ハッキリわからないけれど、PNLはもしかして今回が初関西なんじゃないだろうか? そうじゃないとしても、東京ほど機会は無いはずなので、次はいつ見れるかわからないだろうから、とにかく、今現在間違いなく最も優れたドラムを叩く人の一人であるPNLの音はライブで聴いてみてほしい。東京の人には夏ごろにAtomicが来日する可能性と、秋にはThe Thing、Ken Vandermark、Peter Brotzman(5月にも来るらしい)が集まって、非常に楽しい状態が予定されているとの事。オレはずいぶん長い事東京を旅行中なってしまっているけれど、何があってもそれまでは東京にいる。