Antonio Carlos Jobim

オレがはじめて買ったボサノヴァのCDは、Antonio Carlos Jobimの『Tide』だった。これを聴いてオレは思った、「フュージョンじゃん」って。ボサノヴァフュージョンだったのか。そう思った。それでオレはボサノヴァという音楽を好きになる事が遅くなった。

そういうことがあったので、JobimのCDというものをあまり持っていない。『Tide』以外には『The Composer of Desafinado, Plays』を試したぐらいしか記憶にない。その『The Composer of Desafinado, Plays』を聴いた頃には既にJoao Gilbertoを好きになっていたのだけど、Jobimはオレにあわないと思った。

だけどブラジルでは空港の名前になるほどのビッグネーム、このまま放っておくわけにはいかないと思っていて、オレの聴いたJobimが60年代と70年代のものであるということから、晩年期とも言える80年代のJobimを聴いてみようと思っていたところにリリースされた『Ao Vivo Em Montreal』。気に入っていないミュージシャンの未発表ライブに手を出すというのはハッキリ言って大間違いなのだけど、代表作のようなものを聴いて気に入っていないのだから、そういう間違った手段の方がいいだろうという、わけのわからない考えで手にした。

まあこれも、結局はオレの期待には届いていない。やはりフュージョンかと思ってしまう。ベースが妙にブラコンを思わせてしっくりこないし、Jobimの作品でオレのもっとも苦手なフルートもしっかりフィーチャーされている。だけど今まで聴いたものよりは抵抗感は少ない。それは多分歌入りである事が関係している。インストではかなりフュージョンを感じてしまうけれど、歌が入る事によってそこから少し遠のく。そしてはじめて聴いたJobimの歌声が、まあ、心地良くは無いのだけど、そのおかげでこのフュージョンと勘違いしてしまう音を少し緩和している。それと、Joaoを聴き続けているおかげで頭にこびりついている楽曲が何曲も入っているし、それらはJoaoの演奏とは比べる気にもならないのだけど、作曲したのはJobimなので、「オレの曲だからオレが演奏して何か文句あんのか?」と言われれば文句は無いわけで、それによってやはりJoaoは凄いと思わせてくれるし、そうは言っても、これらの楽曲を作ったJobimのコンポーザーとしての才には文句の付け所も無く、と、なんかごちゃごちゃしたことを考えさせる。

でも最近軟化しつつある自分の耳の状態を思えば、多分あと10年も経つと「Jobimって良い!!」とか言い出しそうな自分も見えつつあるで、これからゆっくりとJobimの音にも付き合っていくつもりになっている。









Tom Jobim 『Ao Vivo Em Montreal』