菊地成孔 クインテット ライブ・ダブ

ちゃんとネタフリを済ませておいたのであれですが、昨夜のピットインの菊地成孔クインテット ライブ・ダブに行ってみました。CDを聴いて行きたくなったのではなく、元々このライブは見てみようと思っていたので、早々にソールドアウトしたチケットもギリギリ座れるぐらいの番号でゲット済みだった。

CDでネタフリはしたけど、CDと今回のライブはユニットが違う。実はその事は最近まで気付かなかった。オレの菊地成孔に対する興味なんてこんなものだったりする。とにかく、ライブでその音と音楽性を体験する必要があると思っていたので、別にユニットが違っているかどうかはこの際関係ない。

そんなこんなで満員札止めなピットイン。前日と比べモノにならないぐらいの客の入り。なんだこれ? まあいい。メンバーがステージに登場し演奏が始まる。菊地さんが何やらボソボソ喋る。というか、ポエトリー・リーディング? いや、ポエトリー・リーディングだなこれ。と、わかった瞬間、思わず笑いそうになった。なんだこれ? お笑いですか? と、思った。とてもポエトリー・リーディングに耐えうる声質じゃないと思うのですが。それ、必要ですか? と頭の中で勝手に問いかけてみた。ちょっとクラクラしつつ、「しまったかも」等と思いつつだったけど、坪口昌恭のピアノの音がよく、隙間な音の配置がなかなか良い。そこに神経を集中。悪いけどこの時点では、藤井信雄のドラムと菊地雅晃のベースは普通に鳴っているぐらいしか認識できない。とにかく、坪口の音を追いかける。そして曲が終わる。改めてメンバーをマジマジと見てみる。なんか皆同じ様なスーツを着ている。なんか変な感じ。まあそれはいい。次の演奏が始まる。その後はあんまり覚えていない。なぜなら寝てたから。菊地さんのサックスは少し意識して追いかけてみたけど、1stは殆ど印象に残っていない。まあ、上手いという事はよくわかったような記憶はある。だけどどんな演奏だったかは思い出せず。多分、曲調が似たり寄ったりで、なんとなくダルくなってしまったのだと思う。だけど1stの最後の曲で目が覚める。菊地氏が歌います。あの声で。オレ、心の中で「ごめんなさい」と言いました。ソールドアウトするようなライブに、オレの様な冷やかしが来てはいけないという事を教える為にミスター菊池は歌っているのだと思います。オレはピットインではあまり歌ものを聴いた覚えが無いけど、それでも酒井俊さんとか、ASのライブに飛び入りのUAとかを目の当たりにして、歌手という業があるという事を感じたのですが、その同じステージで何故か菊地殿が歌っていて、なんだか不思議な気分でもありました。

さて、今回こそは大人しく2ndを捨てるべきであろうと思った。が、ここはライブ好きの性。結局2ndも見る。そして今度は初っ端から菊地様が歌われます。しかも2曲続けて。「ごめんなさい。ごめんなさい。」心の中でつぶやきました。「菊地様様はまるでChet Bakerの様です。ごめんなさい。」懺悔が効いたのか、次はいよいよサックスだけで演奏してくれました。そしてそれは好印象。ちょとこう、バンド全体の音が立ってきた感じ。が、その次はバッラドな演奏。一瞬また謝らなければと思ったのだけど、これも実はなかなか沁みる演奏。なんかColtraneの『Ballads』を聴いている感じ。予想外の展開。そして本編最後、ここでやっと菊地様様様のヤバい音炸裂。アングラなところでサックスを吹き鳴らしてきた者の音。カッコいい。これが聴きたかった。で、聴けた。謝っておいて良かった。1曲目以外殆ど印象の無かった坪口も、ここでのフリージャズな演奏はグルーヴィー。なんとなく頭でっかちなタイプかと思っていたけど、こういう音が出るなら面白い演奏家と言える。あまり印象の無かったリズム隊は、それはまあ、キッチリ仕事していたとも言える。プーさんのご子息でもあらせられるロン毛菊地のベースは、特にどうという個性は掴めなかったけれど、何かダメかといわれればそんな事は無い。ドラムの藤井も堅実な感じだったけど、最後の曲ではステージに1人残され(Milesバンドの真似でしょうか?)、そこでガツガツってドラムソロを披露。ちょっと冗長だったけど、なんか汗っぽくてよかった。で、あえて触れてなかったエフェクト担当のパードン木村。色々言いたいことはありますが、簡単に言うと、別にこの音楽にこういう仕掛けは要らないだろ?と思いました。これはパードンが良いとか悪いとかという話ではなくて、そういう仕掛けは場合によっては邪魔になる事があるという事。個人の趣向だろうけれど、オレは無い方がいいと思った。

アンコールはまたしても菊地様様様様の歌声が・・・。謝ってもこれで終わりなので謝らなかったけど、曲は「スイート・メモリーズ」(by Seiko Matsuda)で、日本語の方がますます歌声は・・・。




なんか全体的に耽美的というか、おフレンチな映画というか、そんな感じだった。シネマティックと言った方がいいかも。客層はライブハウスのジャズ系としては若い方。ソロの後に全く拍手してなかったので、これは新世代側(オレが勝手に決めた)。個人的にソロの後の拍手は好きじゃないし、絶対やらないので昨夜の客のスタンスは嫌いじゃない。だけど、誰もリズム取らない光景を見て、閉鎖的な印象も強い。別にジャズはそういう音楽じゃないと思うかもしれないけど、元々グルーヴという言葉はジャズが発祥なはずで(間違ってたらごめんなさい)、それにジャズ自体元々ダンス音楽でもあったわけだから、実はジャズという音楽はグルーヴ音楽だといえる。それなのにまるで揺れない客席は、この音楽は実はジャズではないのではないか?等と思ったりした。でもオレも全然リズムを取らなかった。だから昨夜の客がリズムを取らないのではなくて、昨夜の音楽はリズムを追わせない音楽だったということなのだと思う。これもある意味新しいかも。やったね成孔様!!



で、もうちょい。

昨夜の前夜の渋谷さんのライブもジャズなわけだけど、音楽として危険な感じは圧倒的に昨夜の前夜の方。それはもちろん、外山明という危険分子のせいなのだけど、外山もミスター成孔氏殿様さんもTipographicaだったんだよな。だから何?って話だけどさ。