渋谷毅 / 石渡明廣 / 外山明

朝は雪が降るといわれていた昨日の東京。雪というのはオレの敵。自慢じゃないが全然歩けない。まるで生まれたての子馬の様な状態。人生の半分を東京で過ごし、年に1回ぐらいは雪に降られているのにコツが掴めない。少しでも勾配のついてる道を歩く時は本当に気分が悪い。だけど昨日は雪は降らなかった。でも寒さは増している。外を歩くのは辛い。暑いのも嫌いだけど寒いのも嫌い。むかつく。寒すぎる。度が過ぎる。そういえば度が過ぎるってどういう意味なんだ? わからない。大体度って何度だよ? ゼロだと省略表示がOKだから、零度って事か? そりゃ、マイナスにはなってなかったから、零度は過ぎている。というか、いつまでも度は過ぎていろ。いや待てよ、零度を過ぎてマイナスになってるのか? それはまずい。と、ぶっ壊れた事を考えながら昨夜はピットインへ。渋谷毅石渡明廣による『月の鳥』のデュオでの演奏という告知だった。昨年見た時はこの2人に外山明と松本治が加わっていたので、CDと同じデュオで聴けるのならばそれも見てみたいと思っての行動。が、直前にピットインのHPをチェックしたところ、外山の名前も加わっている。なんかちょっと騙されたような気分だけど、外山は面白いので文句は無い。まあ、数曲はデュオでやったりとかするのだろうか? などと考えながら開演を待つ。

が、ここでもまた一杯食わされる。しつこいけどピットインのHPでは『月の鳥』のライブであるような告知だった。ところが渋谷さんがステージに登場し、元々は最近リリースされたばかりのソロアルバムのお披露目ツアーの一環であるというような事を喋る。「おいおい」と思うけど、でも実はこのソロでの演奏も聴いて見たいと思っていた。だからオレとしては好都合。そして数曲の渋谷さんのソロ演奏が行われた。

演奏された楽曲は、多分『Solo - Famous Melodies』と『Solo - Famous Composers』に収録されているもの。相変わらず曲は覚えていない。でも、CDで聴けたような、曲の為の演奏。数年前なら寝てたかもしれない。だけど今はこういう音も素直に聴けるようになってきた。

渋谷さんがソロで何曲か演奏後、石渡と外山が加わる。演奏されるのは当然『月の鳥』で、アルバムの並び順に演奏するという事。前回はアルバムを聴いていない状態でライブを見たのだけど、今回はアルバムを聴いた後のライブ。だけど外山が加わっている。ココがミソ。やはり外山のドラミングはおかしい。リズム・キーバーとしての役割は果たさない。外山だけ譜面無し。ピアノとギターより自由に音を扱うなんて、反則というか普通じゃない。フリーインプロでもフリージャズでもないのにな。面白すぎ。

石渡は堅実な音。だけど、所謂ジャズ・ギターの音というより、サスティーンが効いた音で正しい表現かどうかわからないけど、とにかくそういう音。ギターというよりキーボード的な音にも聴こえるし、フュージョン的とも言える。Jacoのアルバムでよく聴ける音でもある。これも昔のオレは受け付けられなかったかもしれない。耳が軟化したのか堕落したのかよくわからないけど、うけつけられるものが増えるという事は、個人的には肯定的な気分。ピッキングの音をペダルで消してる感じもあったので、雰囲気を作るのに適しているし、実際そういう演奏も多い。だけどここぞのソロは流石で、カッコいい。なんか、こういうギターもカッコいいよな。音は一見柔らかいのだけど、その音でテンパったジャズ・ギターみたいなソロを決められると、なんかニヤつく。

渋谷さんのピアノは、曲の持つ方向が違うからか、ソロ演奏よりも強い音の印象。石渡のギターの音に対して、渋谷さんの音の方が音色は鋭く感じる。そのコントラストがいい。余裕を持った感じだけど、ちゃんと向き合って演奏している感じ。「外山君が入ったほうが面白い」と思う感性も、未だに日和ってない事の現れ。

2ndも冒頭の数曲は渋谷さんのソロで、その後石渡と外山が加わる演奏に変わった。演奏そのものは1stと同じ印象。アンコールをはぐらかすライブの終わり方も良い。客が少ないのがあれだけど、まあこの人たちはここで稼げなくても他で稼ぐ手段は多々あるのだろうからいいのか。しかし外山とか、UAとかカヒミのバックで大人数相手に叩いたりしているのに、こういう場所で少ない観客に向けて演奏したりするその落差が、ヤバイ音を発するモチベーションなんじゃないかと思ったりする。