藤原大輔 / 芳垣安洋 / 原田仁

昨年9月の芳垣安洋AG6名義でのライブで、藤原大輔の音を聴いて、そしてその藤原が元Phatの藤原である事を知り、なんとなく色んなものがつながってきた感じがした。その藤原がリーダーになり、AG6の芳垣と原田仁でトリオ編成のユニットを作り、その初披露ライブが昨夜のピットインで行われた。

現在の藤原はQuartz Headという名義で活動を行っているようだけど、そこまではチェックしていない。そのQHの説明を見ると、テクノとかダブといった言葉が使われていて、クラブ音楽とジャズ的なモノの融合という、まあ、ありがちなスタイルなのだろうと思う。だけどAG6に藤原が持ち込んでいたのはアフロなもので、それらを考えればリズムに対する興味が彼の音楽の根本なのだろうと想像できる。

昨夜のライブは、QHで培った打ち込み的な部分を生演奏に置き換えるというものが主軸にあった。演奏されたのはQHのものと言う事ではなく、なんとBasic ChannelJeff Millsをモチーフにしたもの。彼らの楽曲のリズムを芳垣のドラムと原田のベースが代役する。だけど当然、4つ打ちをそのまま再現するのではなく、感覚をリズムが作り上げると言ったものだったんじゃないかと思う。その為、芳垣のドラミングはジャズとかロックとか、或いは芳垣的なプリミティブなものとは少し違って隙間の多いもので、スクエアな感触だった。でもそこは芳垣、なんとなくカリブっぽい響きであったり、硬質なラテンのようであったり、結局耳はそこを聴く。原田はエレクトリック・ベースという、空間支配のしやすい楽器であるにもかかわらず、ソリッドなリフでグルーヴする。これがなかなかカッコよく、今までエレベというと何とかの一つ覚えのようにナスノミツルの音が一番だと思っていたけれど、原田の持つグルーヴもかなり魅力的。一見仏頂面なのもいい。昨夜のメインの藤原は、AG6の時も思ったけれど、決してコテコテ吹くタイプじゃない。ジャズ系のサックス吹きでこのセンスは新しい感覚だと言える。サックスだけじゃなく、エフェクト系の機材で音をいじりながらの演奏。ディレイなんかを多様するので全体にダブな感じ。それをやりすぎないところもセンスの成せる技。

2ndではQHで共演しているダラブッカのHatakenが加わったジュジューカの曲の演奏もあり、テクノの生演奏での解釈だけで終わるライブにしなかった。但し、1stの最後の曲あたりはちょっと冗長で、スタンディングのライブなら文句は無いのだけど、シッティングの状態であれのグルーヴを追うのは少々きつかった。だけどその音の方向は狙ったものでもあるはず。

面白い試みだと思う。こういう方向ってありそうでなかったと思うし、このリズム隊なら藤原が要求するものにはいくらでも応えられるはずで、ここから先このユニットが続いていけるのなら、昨夜以上の面白い音になるのは保証されている。