高瀬アキ

2007の気に入ったCDとして選んでおきながらインプレを未投稿状態だった『Something Sweet, Something Tender』も、11月の高瀬アキと井野信義のライブの印象が良かったから手にしたもの。物販ではなくレコファンで購入。

お気に入りのCDを選んだときに、この作品ともう一つの高瀬アキの作品である『Ornette Coleman Anthology』(これもインプレ未投稿)とPaul Motianの『Time and Time Again』とSupersilentの『8』で悩んだと書いたけれど、それはオレがFrisellのギターを気に入っているという理由でMotainの作品を選びたかったというのが影響している。だけどECMを2枚入れるのは個人的にはイヤだという事、それと他の作品も聴きなおして、『SSST』が一番印象的な作品になった。

オレは特にジャズでは曲というものが余り頭に残らないのだけど、それでもジャズを聴きだしてからの数年は購入できる枚数も限られていた事もあって、その頃に聴いたものは頭に残っているし、結局それがオレにとってジャズといわれる音楽を聴く時のベースになっている。『SSST』にはその頃から聴き続けているThelonious Monkの「Crepuscule with Nellie」と「Locomotive」、Ornette Colemanの「The Sphinx」と「Peace」、さらにアルバムタイトルでもあるEric Dolphyの「Something Sweet, Something Tender」に加えて、ライブで初めて聴いたCarla Bleyの「Walking Batterie Woman」など聴き覚えのある曲が多数を占めている。そういう癖の強い演奏家かつ作曲家のこれらの楽曲に加え、高瀬自身の曲やAlexander von Schlippenbachの「Globe Unity」という硬質な音が加えられ、収録された曲に対してだけでも興味のあるものが並ぶ。それらが高瀬アキの凛とした音で、しかもアグレッシヴさを伴った音で演奏される。どれもこれも聴き所があり、ピアノの独奏というフォーマットの作品で、個人的にはここまで繰返し聴いたのは、初めてそういうものとして聴いたMonkの『Thelonious Himself』以来だと思う。さらにこの『SSST』は録音物としては非常に優れた音質で、オレがそういう事を言っても説得力がないので、それについてはJazz Tokyoの及川公生氏の文章を読んで欲しいのだけど、音が良い悪いということに対してあまりこだわりのないつもりだけど、この作品の音の良さが、繰返し聴く理由になっているのかもしれない。









高瀬アキ 『Something Sweet, Something Tender』