三浦陽子 / 山内桂 / 古池寿浩 / 向井千恵

「もしかしてクラシックスに連荘で行くのは初めてじゃないか?」等と考えながら今夜もクラシックスへ向かう。昨夜のライブであまり聴いた事のない即興を聴く事の面白さを思い出し、今夜も暇なのでそれを聴きに向かう。

演奏順にトロンボーンの古池寿浩のソロ、胡弓の向井千恵さんのソロ、ピアノの三浦陽子さんとサックスの山内桂のデュオ、という内容。この中で名前を知っていたのは向井千恵さんのみ。だけど古池は藤井郷子オーケストラのメンバーらしいし、三浦さんは『Cielo』という昨年のアルバムはJazz Tokyoのサイトでレビューもある。さらに山内はGrid605で大友良英とのデュオがあるという事で、なんとなく豪華な感じ。昨夜ほどの入りはないだろうけれど、まあ、1/3ぐらいの人数はくるのか?などと思っていた。



が、

大間違い。



途中で入ってきた人も含めて観客数5.5人。0.5は、関係者かお金を払った人か判別できなかったのそういう事。台風の時のPere-Furuも6人だったから、それと同じ客数。しかもあの時は演奏者は2人だったけど、今回は4人。日本に即興音楽の未来は無い。

まあそれはおいておいて。まず古池の演奏。何故かピアノの陰に隠れて演奏する。多分、音だけを放置したいという事なのだろう。演奏される音は簡潔に言えば弱音系。フレーズしない。一音で演奏する。それが淡々と表れては消えていく。音の鳴り、或いは音色だけが音楽として捉える頼り。エレクトリックな音のような、正弦波のような音も出てくる。音楽のハードコア。

向井さんはアンプにつないだ胡弓を使う。弦が一本しかなかったから、一胡という事でいいのだろうか? とにかくそれを、当然擦弦しながら音を出す。常に音が鳴るという意味ではドローン的と言えるか。エフェクト的な事はしていないと思うけど、それでも電気的に増幅された音は古池のトロンボーンに比べれば聴き覚えのある音。歩くように踊るというか、漂うように歩くというか、なんとなく浮世離れした調子で演奏する。時々、一胡に取り付けられたピックアップを叩いたり、足元に置かれたタンバリンなどを足で触れて音を差込み現実が顔を出す。この演奏の後、古池と三浦さんが加わって短めのソング・フォーマットな曲も披露した。

最後のセットは山内と三浦さんのデュオ。山内はリードから空気を漏らすような音。普通に思うサックスの音は鳴らない。これもわかりやすく言えば弱音系。そういう音に終始しながら、時々ヒステリックな音を放つ。これが強烈に響く。フレーズはしないのにキーを激しくカタカタさせ、それをメインの音として提示したりする。そういう音を聴きながら、三浦さんは今夜唯一のフレーズを演奏する人として音を選ぶ。バックボーンに何をもっているのか知らないけれど、あえて言えばジャズを知っている人のフレーズかもしれない。フリーインプロ的な硬質さではない音を選ぶ様は、偶然にも前夜の高橋悠治を思わせた。

最後に4人揃っての短い即興。わずかな客の前でも、そういう事を関係無しとでも言わんばかりに音が紡がれる。