浅川マキ

26日のOrquesta Nudge! Nudge!が今年最後のライブ鑑賞と言っておきながら、昨夜ピットインに浅川マキのライブを見に行った。浅川マキについては多少の知識はある。だけどCDは持っていないし、なんらかの形で音を聴いた覚えも無い。それでも12/30という、世間は色々している時期なので、まあ、ゆっくりライブ鑑賞でもしようなどと思っての行動だった。



が、

大間違い。



26日から5夜連続で行われている浅川マキのライブ。5夜も連続でライブを行えるという事をちゃんと認識するべきだった。しかもチケットはぴあでも扱っている。よくよく考えれば、人の入るライブだという事に気付くのは難しくなかった。とにかく、開演前にピットインについて待ち人の多さに怯む。「もしかして当日券無いのか?」等と思ったけれど、とりあえず受付に行ってみるとチケットはあるとの事で、それを購入し、普段ならそのまま地下で待つけれど、あまりの人の多さとチケットの番号が驚愕の200番台という事態に一度外に出る事にした。そして客入れがある程度進んだであろう時間が過ぎてピットインの入り口に向かう。それでもまだオレの番号には回ってきてない・・・。まあいい。そしてやっと中に入れることになり、中に入ってまた驚く。いつもは椅子の無いところに椅子が並んでいて、立見のスペースがほぼ無い。それでも立見が強いられる人はそれなりにいるわけで、「なんか・・・」と思いながら、とにかくなんとかスペースを見つける。もうそこからは一歩も動けない。

そんなこんなな状態でライブが始まる。写真では見た事あったけれど、初めて生のお姿を拝見させていただく浅川マキ。一瞬「灰野敬二?」等と思ってしまった(ごめんなさい)。昔話を織り交ぜながら、時折思い出したように歌を歌う。バックの演奏者はいない状態なので、浅川マキのアカペラ状態。そしてその歌はジャズというよりも昭和歌謡という趣。歌そのものは染みる部分もあるけれど、正直言えばイマイチな部分もある。それでも、そういう事を思いながら聴くものではないのだろうと思った。だけどハッキリ言って、語りの部分は声の衰えもあり、何を言っているのか聞き取れない事も多々あるし、語りの内容が同時代の人でなければ意味のわからない話だったりするので、これはかなりツライものだった。そして1stセットの中盤あたりに、やっとドラムのCecil Monroeが加わる。これで何かしら展開が期待できる。ところがこのドラムがビックリするぐらい溌剌とした音で、浅川マキの歌にまるで似合わない。思わず笑いそうになる。本当にあっていない。これは違和を楽しむ演奏なのか?と思ったけれど、全く楽しめない。無理。「今日は辛い経験になった」と思い始めていた。もう、2ndは見ずに帰ろうと思った。そういうのもありだろうと思った。

もう一人いるはずの演奏者が加わらないまま1stセットが終わり、それでも浅川マキが「ちょっと休憩してすぐに戻ってきます」と言ったので、とりあえずタバコ一本吸う位の時間は待ってみようと思った。だけどこの休憩時間のトイレ移動の人の流れに辟易。こんな中でタバコ吸うのは迷惑なのはわかっているけれど、外に出るにも出られない状態だし、ビールの追加も買いにいけない状況だから、申し訳ないけれど一本だけ吸わせてくれと思いながらタバコを吹かす。そしてそれを吸い終え、少し経つと2ndが始まった。本当に短い休憩時間だった。

2ndはチェロの向井滋春と浅川マキのデュオで演奏が始まる。そのデュオは2曲ほど演奏したと思うけれど、これは良い演奏だった。向井のチェロの響きと浅川マキの歌声は音の雰囲気が調和して、これには聴き入ってしまった。このままこのスタイルで演奏が続いてくれれば、、、と思ったけれど、残念ながらドラムが加わる。それでも1stの浅川マキとドラムのデュオ状態よりはマシで、向井は楽器をトロンボーンに持ち替えたけれど、割と歌とインスト部分が分離するような演奏になり、今度の演奏はコントラストみたいなものも出てきた。インストだけの状態の時はそういうものを聴きにきた気分になれたし、このセットはそれなりに楽しめた。さらにアンコールにも応えて1曲アカペラ状態で歌ってくれて、気難しいイメージがあったけれど結構饒舌だし、セット間の短さなんかも客の入りの状態を考慮してのものだとしたら、そういうところまで気の回る人であろうと伺い知れる。

それでも一つハッキリ言いたい。あのドラムと浅川マキの歌は合わない。恐らく、誰も何も言えない不可侵の存在なのだろう。オレのようなものが、たとえ場末のブログでも、こういう事をいうのは許されないのかもしれない。だけど、良くないものは良くない。それはオレは言いたいし、あの演奏でもOKという人はいたとしても、あの演奏が良いと思った人がいるとは思えない。20年ぐらい一緒にやっていると言っていたけれど、その間、誰も何も言えなかったのだろうか? 浅川マキが伝説の存在として崇め奉られる事と望むのなら仕方ないけれど、少なくても昨夜のステージの状態からはそういう事を考えているとは思えない。あくまでも現役のミュージシャンである事を望むのなら、今の浅川マキを活かせる編成を選ぶべき。それはあのチェロとのデュオのような演奏であり、ピアノやベース、ギターとのデュオといった組み合わせも良いものが期待できる。それでもドラムを入れたいのなら、もっとニュアンスのある音を出せる人、オレには芳垣安洋ぐらいしか思い浮かばないけれど、そういう音でなければ、今の浅川マキの歌には似合わない。




結局今年は82回ライブを見た。来年は半減を目指す。