Manu Chao

90年代初頭、『King of Bongo』でミクスチャー・ロックなバンドとして頭角を現したフランスのMano Negraというバンドがあった。アメリカのミクスチャー・ロックと呼ばれるバンドに比べてMano Negraはより柔軟な音楽性を持っていたけれど、それが逆にオレに刺激の足りないと思わせる一因となり、同じフランスのミクスチャー・ロックのバンドならFree for Feverの方が気に入っていた。そしていつのまにかMano Negraは活動を停止していて、その事も知らなかったけれど、Mano NegraのリーダーであったManu Chaoのソロ作『Proxima Estacion: Esperanza』が話題になり、それにのってそのアルバムを手にした。一応ロックというカテゴライズはされているけれど、バンド時代よりもさらに柔軟に多用な音楽を混ぜ合わせたそのアルバムはロックという足枷が必要のないものだった。

それからManuについて多少のことを知り、Joe Strummerの遺志を継ぐ男としての扱いも知った。確かに音楽性そのものについていえば通ずる部分がある。もちろんClashにもあてはまるけれど、それよりもMescalerosを率いてのJoeの音により近いもので、両者には色んなスタイルを混ぜ合わせながらも、無理のないグルーヴを感じる。

何年かぶりにリリースされたManuの新作『La Radiolina』も今までの路線を踏襲したもの。キューバやメキシコの音楽を思い起こさせるものを多々含んでいる。細かく言えば今までの作品と違いはあるのかもしれないけれど、そういう事を考えるのめんどくさくなったので割愛。これだけ軽やかな音がロックならば、ロックもまだまだ捨てたもんじゃない。









Manu Chao 『La Radiolina』




仕事上の知人で、「すっごい音楽好き。音楽が無いと生きていけない。」と言い切る奴がいて、そいつにとあるキッカケでダブって持っていた『Proxima Estacion: Esperanza』を進呈した事がある。ところがそいつは全くの無反応で、その無反応振りにオレは「なんだかな」という気持ちになった。好みの問題という事は前提として用意しておくけれど、そいつの好きなものは○○とか××で、それは音楽好きと言うより、△△好きなんじゃないかと思った。オレも苦手なジャンルはあるけれど、「音楽が無いと生きていけない」と言い切るなら、もうちょっと色んなもの聴いたりライブに行ったりした方がいいんじゃないの?、と思った。

と、上から目線で毒づいたけれど、それはオレがManuの音にそれだけ入れ込みつつあるという事。いや、『La Radiolina』で完全にこの男の音はオレにとって重要になった。今までこういう事を書いた事は無いけれど、今年も懲りずに書く予定の年間ベストに入れる。