Scorch Trio - 八木美知依 / Ingebrigt Haker Flaten / Paal Nilssen-Love

昨夜もアホ面下げて、Scorch Trioの2daysの最終日を見るため新宿ピットインへ。歩きながら「同じ組合せのライブを2夜連続見に行く必要があるのか?」と自問したけれど答えは出ず、無事開演前にピットインに到着。熱気で溢れかえっているのかと思ったけど、残念ながら思ったほどではない。今回の『北欧Hot! 2007』の4公演は個人的な予想を下回る入りだった。少なくてもThe Thingは満員札止めに近い状態になると思っていた。と、関係者でもないオレがグチっても仕方ない。単なる客の立場では、立見が出るかでないかぐらいが丁度いい感じに思えるのが本音だし。

昨夜と同じく1stは、八木美知依 / Ingerigt Haker Flaten / Paal Nilssen-Loveによる前座扱いの演奏。まったくの個人的見解だけど、昨夜のこのセット、オレが見た即興なライブで最も凄いものだった。八木さんがアルペジオの様に20弦箏の音を奏で、その音にPNLとFlatenが反応し、一瞬でピットインに音が敷き詰められる。この音が広がる瞬間は鳥肌。この強烈な音をどこまで続けるのかという緊張感がオレにはあって、それがブレイクするタイミングを待ちながら出来るだけこの音が続いて欲しいという気持ちになる。そして次の展開に移ると、今度は初日の1stは印象の無かったFlatenのエレクトロニクスがノイズ的な音を放ち始める。これが徐々にヒートアップし、PNLもその音に呼応するように金物系の音を意識させた。八木さんの音はそれに埋もれるかと思ったけれどそうはならず、アグレッシヴというよりも箏らしい叙情的な音が主張してくる。音が渾然一体としていく中、これ以上は無いというところまで音をつり続けた後演奏が収束。30分ほどの演奏だったと思うけれど、圧巻とはこういうことだと思う。その演奏があまりに良かったので、ここで1stは終わりだと思ったけれど、持ち時間がまだあったようで、10分程度の演奏を続けて行った。その演奏が始まる時、正直言ってそれは要らないと思った。例え時間が短くても、あの圧倒的な演奏だけでセットを終わった方がいいと思った。だけどそれはまたしてもオレの間違い。短い時間であるという事がわかっていたからか、ここではさらに凝縮された音で演奏が行われる。箏の弦をこん棒の様なもので叩きながら音を発する八木さん、ゴツゴツした重い音を執拗に繰り返すFlaten、いつもの様に「1stからこんなに叩いて大丈夫か?」と思ってしまうPNL。この10分間はハードコアだった。

休憩中に「このまま帰ってもいいな」と思ったりしたけれど、勿論そんな事は思ってみただけで実行せず、とことん演奏に付き合う。2ndのScorch Trioは初日思った事の確認をしようと思っていた。だけど演奏の印象が異なる。Raoul Bjorkenheimのギターが、初日の印象ほど鳴りっ放しでは無い。音に対するアプローチはやっぱりロック的な色を感じたのだけど、それは現在フィンランド在住ながら、元々アメリカ生まれとの血のなせる技なのだろうか? それはいいとして、音の印象が異なるのは初日はステージに向かって左側に座って聴いていたけれど、昨夜は右側に座って聴いていたからかもしれない。こうなると初日の演奏に比べて印象が悪いのかということになりそうだけど、それは違う。音が抑え目に聴こえるBjorkenheimは初日より演奏に起伏を与えたと思うし、単音でのフレージングも初日より昨夜の方が聴き応えがあった。そしてなによりFlaten。この男のエレベの攻撃性は、オレの聴いたベースの中では最強。今までやばいぐらいに攻めてくるエレベといえば早川岳晴が最も印象強かったけれど、Flatenの演奏はオレの中の早川の印象を薄めてしまった。付け焼刃ではないエレクトロニクス類の扱いも含め、オレは完全にこの男に惚れました(勿論音に惚れたという事)。PNLは・・・もういいか。

この2daysを聴いて、Bjorkenheimのギターのインパクトで言えば初日の方が上だった。2日目はその音を知ってしまった状態だったからか、既に書いたように席の問題からかわからないけれど、初日ほどのインパクトは無かったと言える。だけどそれを補って余りあるFlatenの演奏と1stセットの凄さは、当面忘れる事は出来ない。




なんとなく気になって今年見たライブの数を数えてみた。昨夜を含めて丁度60本だった・・・。ついでなので去年見たライブの数を数えてみた。丁度60本だった。今年はまだ2ヶ月と2/3ヶ月ある。どう少なく見積もっても、後10本は見る予定。とりあえず今年は勢いのままに見たいものは全部見るけど、年末辺りに反省会をやる予定。



とりあえず見たいものはある程度見たと思うようになってきたのだけど、それでもまだ、死ぬまでに見ておきたいものがいくつかパッと思い浮かぶ。北欧系ならばSupersilentを絶対見たいのだけど、Anthony BraxtonとDavid S. Wareは何年待っているだろうか? Braxtonは大ベテランにもかかわらず、いまだに日本でのライブ演奏が行われていないという、意味のわからない状態。そしてWareは、なんとなくこのグループこそがアメリカの最強のグループの様な気がするのに、なかなか来日しない。Wareのカルテットを呼べばWilliam ParkerとMatthew Shippも来ることになるわけで。そうなれば二週間ぐらい滞在してもらって、各々のセッションやShippのソロなんかも期待できるわけで・・・。今回の呼び屋の筆頭であろう、マーク・ラパポート氏に期待したい。