KSS / Talon

昨日は日中に仕事でバテバテな状態になった。スーパー・デラックスに向かうのも止めようかと思ったけれど、今までのパターンでいくと、ライブを見ている途中に調子が戻った事が多々あり、昨夜もそうなるだろうと勝手に決め込んで六本木に向かった。

ハードコア室内楽とかいう、スイスのグループKSSについては全然知らなかったけれど、Talonというユニットが八木美知依さんとナスノミツルのユニットであるという事に興味が沸き、Talon目当てで見に行った。

1stがTalonのセット。ドラムに本田珠也を加えてのトリオ編成。本田はどこかで聞いたことがある名前だと思っていたら、プーさんの『On the Move』でドラムを担当している人だった。八木さんとナスノの事は今更なので割愛するけど、八木さんの箏とナスノのエレベがなんとなくお互いの楽器の個性に合わないような気がしていた。だけどそれはオレの考え違い(でもないところもあるけど)。重低音を響かせながらフレーズを紡いでいくのがナスノのスタイルだとオレは思っていたけれど、昨夜はオレが今までみたナスノの参加したライブで、最もアグレッシヴだったと思う。勿論フレーズするところも多々あるけれど、圧倒的な重低音でハコを支配。これにはかなりもって行かれた。その上を八木さんの箏の音色が暴れるのだけど、どちらも引くような引かない様なせめぎあいになる。ナスノの重低音が凄かったせいで、本田のバスドラや低めの音はあまり聴き取る事が出来ない場面も多かったのだけど、演奏が架橋に入るとナスノの音の上にシンバル系の音が顔をだし、八木さんの音も含めてまるでハーシュ・ノイズを聴いているような瞬間が訪れる。恍惚として聴き入る瞬間だった。

2ndはKSS。リード&エレクトロニクスのHans Koch、チェロとエレクトロニクスのMartin Schuetz、ドラムのFredy Studerのトリオで、ユニット名はそれぞれのファミリーネームの頭文字をつなげたもの。エレクトリックな音を使うという事だったのでそれぞれが生楽器を持っているのは予想外だった。フリー・インプロを思わせる導入部分から、Kochがテナーを割とまともに吹くとジャズ的な印象に変わる。さらにそれをバスクラに持ち替えるとまたもインプロ的な音になる。そういう転換の中、チェロのSchuetzは思いっきりエフェクトした音を使い出す。ああなるとギターでしかない。アグレッシヴなその音で全体を引っ張る。チェロをアルコして鳴っている音がギターというのも変な感じだけど、そのひねくれた感じは気に入った。ドラムのStuderは端正な音がヨーロッパらしいというか、2日前にPNLを見た状態でドラムに強い印象を持つ事は難しい。エレクトロニクスというのは結局PBの事で、KochもSchuetzも音を変える時は必死にパッド上で指を滑らせているのが微笑ましかった。そのエレクトロニクスな音の使い方では、ダブなエコーを使ったりする場面が印象に残る。結構色々変化しながら演奏を続けるユニットだった。

普通はこのままアンコールになだれ込むところだけど、最初からKSS&Talonで6テットとして3rdセットもやると決めていたようで、時間を置いて3rdセットが始まる。このセットはナスノがコントロールをしていたと言える。ナスノの音で演奏に転換点が現れる。ナスノとチェロのSchuetzはお互いに音のアプローチが重ならないように注意していたし、まったく同じ楽器のStuderと本田もお互いを見やりながらドラミングを構築。こうなると八木さんとKochが丁々発止のやり取りが行われそうだけど、殆ど八木さんの独壇場。というか、最初は演奏していたKochは中盤に差し掛かる前から演奏してなくて、どのタイミングで入り込んでくるのだろうと思っていたら結局最後まで演奏を見ているだけだった・・・。別にいいけど。




帰る頃には予想通り体調は良くなっていた。東京エールも4杯飲んだ(3杯目からはバー・カウンターのお姉ちゃんに「東京エールの生ですね?」と言われた・・・)。だけど終演が23時近く。バスがあるのかどうかよくわからず、でも地下鉄は勘弁な気分。渋谷駅までタクシーでも乗ろうかと思って歩き出したけど、結局歩ききってしまった。渋谷駅まで歩いても30分かからないという事がわかった事も収穫。