Pere-Furu

折角保険をかけたのにも関わらず、昨夜は結局クラシックスに行った。台風は接近中で雨はひどいし、そういう場合は足を向けないのが大人の選択だろう。昨夜見たPere-Furuというユニット、面子としてはヴァイオリンの勝井祐二とギターの鬼怒無月というのが元々らしいのだけど、それにSamm Bennettが加わった状態というのが現在の構成らしく、今年になってSammの音を少しライブで聴いて興味の対象になりつつあるし、そして久々に鬼怒のギターを久々に聴いてみたかった。この三人のうちで今恐らく最もポピュラリティーが高いのは勝井であろうと思うけど、その勝井は体調が完全に戻って無い様で、ライブには恐らく参加できない。なので集客に影響が出るという事が考えられたし、なんと言ってもあの天候だから、大人の選択をする人も多いはず。なので、あまり人がいない状態で鬼怒とSammの音を聴ける良い機会になると考えた。

新宿から山手線を使わずバスに乗り、神南一丁目を目指す。時間を計算して乗ったにもかかわらず、普段ならバスを使わないような人達が台風の為にバスに乗った為バスの進行が遅く、オレの予定より10分遅れて到着。公園通りに面した、ちょっと地下に下る駐車場のスペースにクラシックスはあるのだけど、その駐車場の入り口まで来た所でオレの前方を歩く二人連れが鬼怒とSammである事に気付く。近くのサテンにでもいたのだろうか?とか思って中に入る。客席を見る。いつもより椅子の数が減らしてある。そしてオレを除くと4人しかいない・・・。オレを入れて5人。いくらなんでも少なすぎ。でも多分、演奏が始まるようなタイミングで数人は駆け込んでくるだろうと予測。が、結局オレの後は1人しか増えなかった・・・。演奏者2名、客席6名、クラシックスのスタッフ2名、計10名。鬼怒とSammのライブに客が6名。なんだこれは?と思ったけど、オレがそんな事を思ってもどうにもならない。いくらなんでも渋谷でこんな数のライブを見るのは今回が最後だと思うので、逆にこれは折角なのでそういう空気を楽しむ事にした。



Samm Bennettは当然ドラムセットかそれに近いものを使うのだろうと思っていたけど、そういうものはステージにあたるところに見当たらない。あるのは譜面立てとか小物を入れてある箱を載せた台とか、脇に抱えて使うパーカッションの様なものぐらい。どうするんだ?と思っていたら、直径50〜60cmぐらいの厚みのないパーランクーの様な物を抱えてSammが登場。それを叩きながらSammは歌う。そうか、この人歌う人だったか・・・、今更そんな事に気付くとは・・・。小物が置いてある台にはiPodがあるようで、曲によってはそこからベース・ラインが発せられ、グルーヴが生まれる。歌われるのは当然英語の歌なので、何を歌っているのかオレには全然わからないのだけど、余芸では無いレベルの歌を披露していて、なかなか聴かせる。特にカントリー調の歌とか、普段録音物でしか聴いてこなかった種類の歌を聴くと、何かがオレに沁みるようで、予想外な展開。

鬼怒無月は二本のアコギを使い分ける。こちらも予想外にエレキは使わない。だけど、オレは鬼怒のエレキよりもアコギの方が好きなので嬉しい展開。クールな眼差しでSammの方を見やりながらギターを弾く鬼怒は、どんな種類の音楽でも吸収し、それを自らの語彙として発する事が出来るタイプで、だから歌伴でこれほど頼もしいギターもいないだろうと思う。曲がどんなスタイルであれ、普段からそういうギターばかり弾いているような演奏を聴かせる。

演奏が始まるまではインストなセッション的演奏だと思っていのだけど、全編歌モノのライブだった。でも、前日のSDLXの内容があまりにも良かったので、昨夜は逆に歌モノのライブでよかった。もし勝井祐二がいれば違う展開になるのだろうけど、だから昨夜は貴重だったと思う。ライブの場に必ずいる、演奏が終わっても拍手もしない、アンコール時にも手拍子もせずにただ座って待っているという様な気の抜けた客もいなかったし。と言っても、昨夜はアンコールの要求はしなかったけど。




何万人もの前で演奏し、それを見た人の感想が「指輪の見える距離だった」という演奏。わずか6人の前で演奏し、初めて聴く歌声や歌、しかも歌っている内容は全然わからないけれど歌そのものが沁みるものを感じさせる演奏。音楽という枠以外で共通点は見当たらない。けれど、どちらもお金を貰って演奏している。どっちを聴くのかは趣味趣向。ホントにそんな言葉で片付けられる事なのだろうか?