Prepared Piano Night #1

8月と9月は収入ゼロの為(いい年こいてこういう状態はツライ / 若い頃は半年ぐらい収入なくても大したこと無かったのに)、今月はライブを見る事を意図的に減らそうと思っているのだけど、季節の変わり目で体調がイマイチ不良なので、今週もどこかでライブを見ようと決めておかないとダルい一週間になりそうだったので木曜にクラシックスにでも行こうと思っていた。ところが昨日から関東地方に台風接近中というニュースが出回り、木曜の夜はどうにも危険な雰囲気が出てきたので、これは木曜の保険をしておく必要があると思って昨夜スーパー・デラックスに行った。

昨夜のライブは先週の芳垣安洋AG6で芳垣が告知していたライブで、プリペアド・ピアノと芳垣らの打楽器が絡むというもの。それを知った時点で興味がわいたけれど、SDLXのHPを見るとプリペアド・ピアノのソロとの二部構成であるという事がわかり、それが二の足を踏んだ理由だった。

1stはプリペアド・ピアノによるソロ演奏。演目はJohn Cageの楽曲で、Cageについて今更四の五の言うことも無いし、その楽曲が演奏されるライブというものを見た事は無かったので、昨夜はそれを良い機会という解釈に変えた。演奏者は中川賢一、名前ぐらいは見た事があるようなないような感じだけど、音楽をキッチリ勉強してきた人。Cageの曲をいくつも演奏していく。プリペアド・ピアノは郷子ねーさんが演奏中に取り入れているのを聴いているけれど、きっちりセッティングして弾いているのを見ていると何故か不思議な気分。プリペアド・ピアノの音はチェンバロの様であったり親指ピアノの様であったり、音色の色々が聴ける。Cageの曲とはいえ、キッチリ作曲されているもので、正直曲自体に魅力を感じるものは少ないのだけど、演奏というよりも音をボーっと聴いているのは悪くない。でも、うつらうつらな人や、完全に寝てしまっている人も多かったので、ソロで何曲も続けてというのは構成上少し厳しかったかもしれない。そういう人たちを見ていてオレも危なくなるかと思ったけれど、演奏よりも音そのものを聴いてしまっていたので、集中は切れなかった。

2ndはいよいよコレクティブ・インプロヴィゼーション芳垣安洋とOrquesta Nudge! Nudge!のメンバーでもある高田陽平がパーカッションを担当し、プリペアド・ピアノ中島ノブユキ、自作楽器を扱う梅田哲也の4人。

音を鳴らす事、響かせる事を主眼に置いたインプロだったと思う。昨年末にSDLXで見た芳垣のソロでの演奏と同意義とも言える。いくつもの色んな響きを作り上げる。演奏はプリミティブなフリー・ジャズの様であるけれど、ジャズは感じない。投げたり落としたり叩いたりして音を出し続ける芳垣。その芳垣と同じ方向を向きながら演奏に厚みを加える高田。ドローンのように音を発し続ける機材や、どんな音が出ているのかよくわからない機材をいじり続ける梅田。そして終始絡むのではなく、時折現れてはプリペアド・ピアノの音を効果的に挿入する中島。やはり、SDLXという場をうまく使う芳垣の出す音にオレは惚けてしまう。練り歩きながら音を発するのは勿論、ステージに当たる部分だけではなく客席側にもいくつかの楽器が置いてあり、それを使った演奏はPAが無くても臨場感を作り上げる。色んな視点が含まれた演奏だったし、これはどうあがいても録音物からは得られない感動があり、そして場を有効に使ったモノでもあり、こういうライブこそ、あえて足を向けるという事の意味が強くなる。