Special Improv Quintet!

昨夜は梅津和時の二日目や、下北沢で大友良英の変則的なギターソロなどがあったけれど、ここはあえて、スーパーデラックスに行く事にした。それは中村としまる(ノー・インプット・ミキシング・ボード)と秋山徹次(ギター)という弱音での表現をやっていた二人の音に触れるいいタイミングだと思ったから。それと、この時期に東京エールを飲まなくてどうする?、という考えがあったことも否定しない。

この手の音には客が入らないという事をユリイカ大友良英特集号で知ったけれど、それでも中村と秋山というその手の音の代名詞みたいな二人が揃い、さらにMartin Taxt(チューバ)とKim Myhr(ギター)という普段は聴けないプレーヤー(オレは初めて知った名前だけど)が加わるのだから、座れないというほどの状況は無いだろうけれど、寂しい状況という事は無いだろうと思っていた。

が、大間違い。オレがSDLXに着いたのは開演予定時間の10分前。地下に下りて受付についてもそこに人影無し。「???」なオレ。開演時間を間違ったかと思ったけれど、受付にこれ見よがしに置いてあるチラシをみると間違っていない。困ったと思い、中を覗くと客席に一人だけ・・・。「これは・・・」と思ったけれど、意を決して中にはいると、入り口のすぐそばで簡易の受付。そこで料金を支払い、いつもはとりあえず席を確保してからバー・-カウンターに向かうのだけど、昨夜はそんな必要も無く席に着く前に東京エールを求めてバーへ。そこも普段なら2〜3人ぐらいの従業員がいるのだけど、昨夜は女の子が1人で対応。「まさか客がこれだけって事は無いよな・・・」と何故かオレが不安な気持ちになったけれど、一人二人と少しずつ客が増え、最終的には15〜16人近いところまではいたように思う。だけど恐らく、その半分か少なくても1/3はプレーヤーの関係者と思われ、なんだか複雑な気分。

まずは秋山とMyhrのギター奏者二人によるセッション。秋山はスチール弦のアコギで、Myhrはナイロン弦のクラシック・ギター。もちろんどちらもアンプにつながってなくて、マイクが音を拾う。アコギによる即興となれば、オレが頭に浮かぶのは当然の様にBailey。そしてこのセッションは、そこから連なる音を発していた。大友が秋山を「ジャズの要素が全く無い」と言っていたけれど、だからこそしがらみの無い音になるという事なのか、とにかくオレはこの音には従順になる。Myhrは楽器の特性上、秋山の放つ音よりはアタック感は弱いけれど、即興というよりも作曲された音楽を演奏しているように寄り添う。個人的にはこの演奏を聴いただけでOKな気分になった。

続いて中村としまるとTaxtに古池寿浩というトロンボーン奏者が加わった演奏。こう言うとなんだけど、他の楽器に比べれば音の主張が弱いほうの楽器が並んだ状態。中村のNIMBは繊細にノイズを撒き散らす。そこに絡む二つの管楽器は、まあとにかく普通に音を出さない。大きな音を絶対に出さない。古池は多少ボントロらしい音を出すけれど、その音量はとにかく小さいし、Taxtは終始普通の音は出ない、というか出さない。こうなると○○という楽器である意味は殆ど無いけれど、それはそれぞれがコントロールできる楽器を使っての演奏だから一応その楽器を使っているという紹介になるという事になると思うのだけど、その楽器によるアプローチが本来その楽器からイメージする音とは違っていても、それぞれのプレーヤーの表現に必要なものという事になるのだろう。

2ndは五人揃っての演奏。五人いると思えないぐらい繊細に音を構築。最後はMyhrとTaxtによるデュオ。Myhrがプロペラのようなものでひざに載せたギターを弾くと、昨夜で最もリズミカルな音が聴こえた。

昨夜のライブは嫌が応にも耳をすませて聴く事になり、聴く側の集中力が試される。ここから何を聴き取れたかを書く事は難しい。だけど一つだけ言うと、例えば自分で楽器を持ったことがあるなら判ると思うけれど、気分が高揚すると音へのアプローチは感情に流される事があるはず。それは何かと言うと、音が大きくなるという事が言いたい。強く弾いてしまうはず。だけど、そういう感情の移入が全く無いと思わせる昨夜のセッションは、彼らはひたすらクールに演奏をしているのか?、それとも、本当に今までの楽器演奏とは全く異なったアプローチを用いているのか?、という事が頭に残った。