朴在千 / 大友良英

キッドアイラックはアングラな表現を昔から支え続けている場で、だから名前は知っていたけれど今回初めて足が向く。ライブ・ハウスというわけではないので想像はしていたけれど、凄く小さなイベント・スペースといった趣。そこで野外で使いそうな背もたれの無い折りたたみの椅子に座って見る。間違って入ってきた人がいたらかなり怪しい集団だな・・・。

朴在千は韓国のパーカッション奏者。らしい。大友良英のブログで知った名前だから音は聴いた事は無い。オレもやっと韓流ブームに乗って、韓国の文化に触れる事になる。真面目な話、これまで韓国のTVや映画は見た事も興味も無いし、音楽でも姜泰煥と大友がGround-Zeroでサンプリングした金石出ぐらいしか聴いた事が無かった。

朴は床に座って演奏をする。並べられた楽器はドラムセットと言うより、韓国の伝統的な音楽で使われるようなものだと思う。シンバルの様な金物の音が特徴的で(イメージの中の韓国の音らしいと思った)、感覚としてはビートレス。その音を狭い空間にポツリと置いたり激しく並べたりする。それに対し1stセットの大友は、ギターをフリーインプロのアプローチで対応。アヴァンな大友というのはよく聴いているけれど、こういうアプローチはあまり聴いた覚えが無い事に気が付く。そしてもう一つの楽器であるターンテーブルで時々効果音の様な音を発し、かすかにノイズの成分をばら撒く。

切れ目の無かった1stに対して、2ndは3つの演奏に分かれていた。その中の始めの演奏は1stと違い主にターンテーブルを操る。1stでもそうだったけれど、大分前に見たときと違い、アヴァンな音というよりもあの手この手で微妙にノイズを発生させる手法が目立つ。ターンテーブルに何かを載せたり、針とは違うもので音を拾ったり、『The Multiple Otomo Project』で見る事の出来る手法。その次の演奏では再びギターをメインに演奏。それが終わった時点で時間をチェックし、もう1曲演奏を行った。最後の演奏のターンテーブルが、この日では一番アヴァンな大友の音だった。

手法が気になるという点で大友良英の方を多く書いたけれど、朴在千の音の使い方とか響きはオレはライブではあまり聴いたことのある類の音ではなくて、強く印象に残った。ハッキリとした個性を感じる。

わかったような事は言いたく無いけれど、恐らく決め事なしの完全即興だったんじゃないだろうか? 自分の音と相手の音と場の空気と、それだけを頼りに演奏しているように思えた。Baileyがやっていたのはこういう演奏なのだろう。

この組み合わせは絶対に録音を残すべき。個人的にはErstwhile辺りが最適だと思う。