ナンバジャズ

芳垣安洋4daysに全部行くつもりは無いのだけど、とりあずこの四日間で最も注目されるのが昨夜の山本精一とのナンバジャズだと思う。少なくても個人的にはこの日に注目していた。というのは、やはり山本の音を聴くという事と、一年前に鬼怒無月と芳垣の同様のセッションがあった事に関係している。Boredomsや思いで波止場、その他の山本のユニットやソロの作品も結構色々聴いていて、だけど、か、だから、か、山本というギタリストについては名前は思いっきり脳裏に刻み込まれているのに、そのギターの個性が全然掴めていないし、ライブでの演奏も昨年のスタジオ・コーストでのRovoで聴いただけしかない。Rovoは場所もあれだし、音楽もグルーヴの為のものなので、あのライブで山本という個性を聴くのは難しく、まあ、バンド全体で楽しむものという事もあって、特に山本を注目して聴いたりはしていなかった。だから昨夜はそれがわかる最大のチャンス。しかも相手が芳垣ならば文句の付けようが無い。

ナンバジャズという名前はユニット名という事ではないと思うけど、どうも、「なんば歩き」(検索して下さい)のようなジャズをやると言う事らしい(ナンバ=難波では無いとの事)。そういったMCが冒頭に始まり、これが実に長い・・・。演奏が始まる前にこんなに喋るのを聞いたのは初めてで、ちょっと面喰う。でも流石は関西人同士、喋りは流暢で面白い。コテコテのどつきあいのような笑いではなく、「ぬかるみの世界」な笑い。困ったもんだ。

多種多様な音楽性は見せながらも、ジャズというイメージの無い山本からジャズを感じるのか?という事がまずは疑問だった。が、その疑問はあっさり解決される。1stセットにおける山本のギターには、確かにジャズを感じる。音色だけではなく、アドリブの構成というか、そういうところにもジャズ的なものを感じる。じゃあそのジャズ的なものというのはどういう事か?と聞かれても答えにくいのだけど、とりあえずジャズを多々聴いた中で聴けた音に近いものを感じた、という言い訳をする。まあ、個人的にはMarc Ribotに近いものを感じた(Ribotがジャズか?という疑問は・・・)。少し癖を抜いたRibotという感じのシングル・トーンのソロが印象深かった。

2ndも長いMC、というかお喋りから始まる。わざわざ山本が持ってきたらしい徳利と猪口がセッティングされていて、それを手に取り口に運ぶ二人。しかも中身はホンモノの酒らしく、それは芳垣がその辺のコンビニで手に入れてきた吟醸酒だとか・・・。ここの喋りも長く、かなり笑わせてもらったけど、趣旨が変わってしまうので割愛。

2ndのオープニングで山本は12弦のアコギを使う。12弦という事はコード・カッティングで演奏ということにつながるといえるのだけど、正しくその通りな演奏。その後はプログレ的なインプロとでもいうか、そういう演奏が繰り広げられ、そのせいか、2ndにおける山本の演奏にはあまりジャズを感じていない。だけど、それこそがどちらかといえば山本の素のはずで、なかなかアグレッシヴな演奏を繰り広げる。そして山本の歌付きのアンコールではアルコールのせいという事でかなりぶち切れた演奏を聴かせる。終始椅子に座って演奏していたのに、最後は立ち上がってそのうち椅子でも蹴っ飛ばすんじゃないかという勢い。キレテル。ピットインでこんなにキレタ演奏を見たのは、Jim O'Rourkeぐらいしか思い浮かばない。あんなに落ち着いていそうな人がああなるとなかなか嬉しいもんで、「パンクだな」と思った。というか、ちゃんと阿部薫が憑依してました。



昨夜は山本精一はいったいどういうギタリストなのか?という事を聴きに行ったと言ってもいい。それでどうだったかというと、想像以上に器用なギタリストだと思った。元々ジャズを感じさせる事が無かったということもその感想の一因なのだけど、アヴァン〜ロックよりのギターである事に間違いは無いと思うけれど、それでもそのアヴァンな部分もあそこまでの聴かせる音を持っているとは思ってなくて、ちょっと舐めていた事を反省。今まではギタリストというより曲を作るという意味も含めて山本精一という人の音楽を聴いていたのだけど、単純にギター弾きとしてだけでも底が知れない。才人。

芳垣については端折ってるけど、こういう演奏において、芳垣に抜かりがある分けない。キッチリ山本をフォローしながらキッチリ煽る。そして自らも主張し引かない。しかも前日のEmergency!の時に負けないぐらいテンション高め。だから全体としてどうだったかなんて、言わずもがな。