Havard Wiik Trio

やはり見ておくべきだろうと思って、昨夜はピットインに行った。『The Arcades Project』の印象が良かったという事が一番の理由だけど、よくよく考えてみたらピアノ・トリオ(ドラム&ベースなスタイル)のフルのライブを見た事が無くて、そういう事も含めて今回はいいタイミング。

Atomicでのライブの記憶があまり無いので、殆ど初めて聴くような気持ちで聴く事になったHavard Wiikのピアノ。CDではなかなかいいピアノを聴かせていたけれど、それは当然ライブでも確認できた。但し、基本的にはトリオとしての曲の表現と、ドラム&ベースにも十分なスペースを与えるなど、決して我の強いタイプではないと思う。演奏された楽曲はやはり藤井郷子を思い出すようなもので、場所が場所なだけにますますそれは強まる。そして演奏そのものも近い感じはあったけれど、郷子ねーさんならもっとアグレッシヴな音を使いそうな場面でも、そういう音を用いる事は殆ど無く、郷子ねーさんのクリーン・バージョンだと思った(どちらにとってもいい意味に取れなさそうだけど、どちらにとってもいい意味で使っているつもり)。ピアニストとしての我みたいなものは本編最後の曲で登場。ここで圧巻なソロを聴かせ、コンポーザー以外の才も発揮。

CDを聴いて最も引かれたベースのOle Morten Vagan。ゴリゴリな音を期待していたけれど、そういう感じではなく、全体に気を配りながらフレーズを響かせるといった印象。ソロでは流石な指使い(指強そう)。て最も耳に残ったのはアルコでの音。アコースティック・ベースでアルコを使うというのはよくある事だけど、Vaganの音はそれまでに聴いた事のないような音で、個性的。やはりこのベーシストは面白い。

そしてCDではあまり気をとられなかったドラムのHakon Mjaset Johansen。が、個人的な昨夜のMVPがこのJohansen。パワーヒッター系ではなく、細かく速い音を繰り出すタイプで、音使いだけでなく、叩き方やスティックの持ち方、佇まいまでも含めて凄く外山明に似ていると思った。音を入れるタイミングは外山のようなとんでもないタイミングではないのだけど、音が鳴っている瞬間は外山を聴いているように錯覚。音色という部分は、いつもシンプルなセットの外山とは違い小物も使うタイプで、そういう意味では外山の音色よりも多彩。似て異なるけれど、だから良い。

アンコールはOrnette Colemanの「What Reason Could I Give?」(『Science Fiction』に収録 / 違う曲だったらごめんなさい / Ornetteの曲は似てる曲多いんだよ・・・)。ちゃんとこういうのも聴いてるんだなあ、と、ちょっと舐めた事を思いながら、この日のライブは終了した。

アップな曲とスローな曲が交互に演奏されていた印象で、ライブ全体の構成もよかった。正直言ってかなり期待以上の演奏で、ホントに今のノルウェーのジャズ・シーンは凄い事になっている。