ミュージック from フィンランド

渋谷毅 / 石渡明廣のライブの時にチラシを見ていて、土曜の昼の部夜の部に『ミュージック from フィンランド』というライブがある事を知る。面子をチェックすると全然知らないフィンランドのミュージシャン達と、それぞれの公演の前座に日本人のミュージシャンが配されていて、夜の部の太田恵資 / 佐藤正治も良さげだったけれど、昼の部のマキガミサンタチ / Samm Bennettには多大な興味が沸き、こっちを見る事に決めチケットを買って帰った。そして昨日の夜、「ライブ見ながら昼からビール」と考えながら土曜の昼の新宿という、気持ちの悪いぐらい人がいる場に向かう。

フィンランド人と思える外国の方も多いライブで、大入りとは行かないまでも多少の立見があるような入りだったと思う。あまりこういう事をいうのはいけないかもしれないけれど、フィンランドの方々は他の国の人達より明らかに行儀がよく、非常に好感を持った。

肝心のライブ。マキガミサンタチというのは、現ヒカシューのメンバー三人でのユニットらしく、巻上公一にギターの三田超人とベースの坂出雅海という構成。それに今回はドラム&パーカッションなSammが加わって演奏を行う。自由方便な巻上の声やテルミン、見た目は普通のオジサンだけど、決めるところはなかなかクールな音を聴かせる三田、他に比べれば渋いポジションだったけれど、堅実な音と時折主張した音を聴かせる坂出。そして、リズム担当ながら巻上並みに自由なSammの音は、辣腕ドラマーという風情ではなかったけれど、ユニークな音が満載。それぞれが遊び心と、音に対する真剣な眼差しを持っているから、楽しくも引き込まれる音を放つ。出来ればこのままこのユニットの演奏を聴き続けたかった。

続いてのセットが主役のMemnonというユニット。オレの知識はチラシで読んだ程度。要するにほとんど何もわからないまま音に触れる。Memnonはカンテレというフィンランドの伝統楽器を使うEva Alkulaという女性(いかにも北欧の美人というルックス)と、Ville Hyvonenというラップトップ使いの男性のユニット。簡単に言えば、フォークトロニカと言ってもいいと思う。ただ、Fenneszなんかが音にノイズを混ぜている事に対して、このユニットはそのノイズという成分を抜き取っていた。ビートレスな感触も多く、その為聴く側にも多少の緊張感が生まれるけれど、リリカルな音をカンテレが奏でる場面も多く、どちらかに行ったきりにはしない。ピットインという場所でのライブには珍しく、バックに映像の投射や持込のライトでの投射など演出も凝っていて予想外に引き込まれる。フォークトロニカ系の音が好きな人は要チェック。

最後はJarmo Saariという、ギターをメインにサンプラーやエフェクトの類を操るギタリストのソロ演奏。これは期待度高かったのだけど、残念ながらイマイチ。この手のスタイルは日本には内橋和久や大友良英という世界に誇るべき存在がいるので、余程個性的なものを見せてくれなければオレには面白いものじゃないのだけど、現時点でのJarmoという人の演奏は特に個性と言うものを感じず、簡単に言えばどうでもいいものだった。曲というスタイルで何曲か演奏したのだけど、一曲目の途中からオレは眠くなり、後は終わりまで眠気との戦いが続く。演奏にも特に光るものを感じなかったけれど、曲も特に面白いものでもなく、フィンランドという国においては個性的なスタイルなのかもしれないけれど、先鋭的な音が発展しているような国においては苦しいと思う。