渋谷毅 / 石渡明廣
聴き込んでからと思ったけど、ここは勢いで。
ライブに行く前から、渋谷毅の石渡明廣『月の鳥』には興味があった。手に入れようとタワレコやディスク・ユニオンの新宿ジャズ館にも行ったけれど見付からず、ネットのタワレコやHMV、amazonを探しても見付からず、そのうちこのCDの事を忘れていた。だけど結局CDよりも先にライブを見てしまったわけで、縁というのは不思議な気もする。
ライブではトリオ / カルテット編成で演奏された『月の鳥』の楽曲は、CDでは渋谷と石渡のデュオで演奏されている。外山明という危険分子がいないことでストレートなジャズの世界になっていて、ライブの時に少しはあった緊張感のようなものはここには感じない。しかしというか、だけどというか、だからこそなのか、まあとにかく、ここにある音は魅力的としか言えない。曲を作ること、それを表現すること、ピアノを弾くこと、ギターを弾くこと、そういう事が丁寧に当たり前に。奇をてらわず淡々と、だけど何かしらの情熱をもって演奏される。それが『月の鳥』には収められている。
結局これを耳にする人というのは圧倒的に少ないと思う。ロックとかアヴァンとかヒップホップとかR&Bとかテクノとかハウスとかオペラとかゴスペルとかボサノヴァとかレゲエとか、そういうわかりやすい魅力のあるものとは違って、ここにあるのは新しくも古くも無い演奏者の生のままのジャズで、そういうものの聴衆は信じられないぐらいに少ない。
今のオレはBill Evans / Jim Hallよりも、『月の鳥』にジャズの魅力を感じる。
渋谷毅 / 石渡明廣 『月の鳥』