David S. Ware Quartet

昨年の『Balladware』がちょっと古めの音源のリリースだったということもあり、久々な感じのするWareのカルテット名義の新作『Renunciation』。昨年のライブを収めたものらしいけれど、ピアノはMatthew Shipp、ベースのWilliam Parker、ドラムのGuillermo E. Brown、この面子が揃っているだけで、もう他に書くことはあまり無い。と、言いながらも一つ思った事を書く。Part I 〜 IIIまでのバリエーションが収録されている「Renunciation Suite」のPart Iでの演奏を聴いてオレは、阿部薫の音が頭に浮かぶ。ここではWareが無伴奏ソロで音を鳴らす場面と、リズム隊が三人で音を鳴らす場面を交互に演奏しているのだけど、そのWareの演奏にオレは阿部を思う。Wareには『Live in the Netherlands』という無伴奏ソロでのライブアルバムもあるのだけど、そこでも阿部の音に近いものを感じていた。だけどその時は、サックスの無伴奏ソロというあまり無いスタイルの代名詞が阿部である為、そのせいでそういう風に感じてしまったのかと思ったのだけれど、「Renunciation Suite」での無伴奏ソロの音を聴いて、やはり阿部を聴いている気分になる。「Renunciation Suite」でのWareはフリー・ジャズに付きまとうフリークトーンのイメージを感じさせずに吹き続ける。と言うと、阿部のイメージとは違うかもしれないけれど、だけどここにあるスピード感、単純に速いという意味じゃ無いスピード感は、若くして姿を消した阿部と言う男が、自らの音のみと対峙し続けた結果にしか感じなかったもので、それを含んでいるWareというサックス吹きの重要さ、を、改めて思う。







David S. Ware Quartet 『Renunciation』