Kabusacki

アルゼンチン音響派という微妙なカテゴリーの代表格がFernando Kabusacki(らしい)。昨年の『

Tropicalismo Argentino』を聴いてから少しずつそのシーンに興味を持ちつつある状況だけど、Kabusackiは『Luz De Oro De Chipor』を試してみたものの、あまりパッとした印象も得られなく、そして最近作では無いという事も手伝って、聴きこむという状況に至らなかった。だけどそのKabusacki名義の新作『The Flower / The Radio』がリリース。いい機会を得た。

『The Flower / The Radio』は、適当に取りためていた作品をKabuachiがコンパイルした『The Flower』、Fernando Samaleaがコンパイルした『The Radio』という二枚組み。『The Flower』がKabusacki 7、『The Radio』がKabusacki 8というKabusackiの通算作品番号が付いている。

まずは7の『The Flower』。インタールードな作品を除いても、1分に満たない曲があったり、3分台の曲が6曲、そしてこのアルバムで最も長い6分近い曲が1曲。全部で24曲収録されているのだけど、その半数以上が3分に満たない。そのデータだけを見ても、このアルバムがじっくり演奏を聴かせるタイプのものではない事が推測できる。これを手に入れてから、わりと繰返し聴いている。雑誌やらネットの情報やらを見ていると、『The Flower』はアンビエントな作品と書いてある。まあ、そのとおりだと思う。だけどアンビエントといっても『Music for Airports』より、『Before and After Science』に近い。というか『BAAS』はアンビエントな作品とは違う。『BAAS』がアンビエントへの通過点の一つだと考えるなら、『The Flower』もアンビエントそのものというより、それに近しい音と考える方が正しいかもしれない。ではなぜ『The Flower』に『BAAS』を感じるのかというと、『The Flower』で耳に印象的なメロディーと、それを奏でる音に「By This River」を感じるからで、正直言って感じるというよりも、ほぼバリエーションに聴こえてしまう。「By This River」のバリエーションに思える音を幾つか見つけてしまえば、これがアルバムという形態である以上、オレは『BAAS』に近いものを感じるという、単純な話。

もう1枚の『The Radio』は全16曲で、3分台の曲が多い。そして『The Flower』に比べれば躍動的なトラックが目立つ。躍動感と言ってもロック的ではなく、妙にクリアな感じに、最初はフュージョンを感じた。リズムは打ち込みも多く、スカスカな感触を感じる曲も多い。ヴォーコーダーなヴォーカルがかぶさる曲もあれば、妙にベースがグルーヴィーな曲もある。頑張ってみたけれど何故かダサいテクノみたいになってしまいました的なモノや、内橋和久のダクソフォンが奇声を上げる曲もある(ダクソフォンを知らない人の為に補足すると、「The Crawler」の妙な人の声みたいなのは、ダクソフォンという楽器が出している音です)。要するに色んなタイプの曲が詰まっているのだけど、全体的に妙に明るくユーモラスな雰囲気があって、それが統一感をかもし出す。

この2枚をランダム再生すると、その音の変化に万華鏡を当てはめたくなる。回せば色んなパターンを見る事が出きるけれど、それでもキチンと一つの筒の中に収まっている感じが、このアルバムのイメージ。









Fernando Kabusacki 『The Flower / The Radio』