Andrew Hill

一月末あたりに手に入れながら、インプレを書いてなかったAndrew Hillの『Mosaic Select: Andrew Hill - Solo』。これはMMの1月号の「じゃずじゃ」でマーク・ラパポート氏が紹介していて、それを読んで購入したもの。最初に書いたように手に入れたのは一月末ぐらいだったけれど、なんとなくタイミングを逃し、今日に至っていた。

Hillは個人的に気に入っているジャズのピアニスト。60年代から活動している人で、オレが聴くキッカケになったのは『Point of Departure』にEric Dolphyが参加していたという、わかりやすい理由。その『Point of Departure』はDolphyファンのオレにとって、『Out to Lunch』と表裏一体の名盤だと思っている。Dolphyほどの異質な感じは無いけれど、それでも当時のジャズという枠からは違う楽曲、そしてHillの弾くソロはピアニストの我を押し通すものではなく空間を生かしていて、この斬新さは当時のピアニストではHerbie Hancockぐらいしか並ぶものがいない。それからオレは少しずつHillのリーダー作を手にして聴いているけど、昨年の『Time Lines』はHillを聴き続けてよかったと思う傑作だった。そのHillが70年代に残した『From California with Love』というアルバムの本編とアウト・テイクなどを収めて三枚組みにしたのが『Solo』で、全編ピアノ・ソロという内容。これを手に入れて(結構苦労した)、嬉々として聴いたのだけど、ピアノの音があまり好みじゃなくて、一度聴いてそのままにしていた。それを今、改めて聴いている。やはりピアノの音は好みではない。この音、この間のCecil Taylorのコンサートのピアノもそうだったのだけど、クラシックのコンサート・ホール系な音というか、そういう音に聴こえる。少し違うかもしれないけれど、チェンバロに似た音色だと思う。その音のせいで放って置いたアルバムだけど、リリシズムはありながらも甘く流れていかず、かと言ってジャジーな音色とも違い、勿論フリーではない。捉えられそうで捉えにくく、これからも時々思い出して聴いてみる事になるのだろう。









Andrew Hill 『Mosaic Select: Andrew Hill - Solo』




Mosaic Select: Andrew Hill-Solo』は、全編スロー〜ミディアムなテンポで、それが初めに聴いた時のインパクトに欠けた原因でもある。Hillの最初のソロ・アルバムである『Hommage』なんかは、音色も曲調もオレの好みで、それと同質のものを期待した事も関係ある。

一応購入した者の立場で書いておくけれど、この『Solo』は、あまり盤質がよくない。恐らくプレス工場の質が低いのだろう。これは輸入盤には時々あることで、この場合、商品を代えてもらっても同じようなものしか手元には来ない。その点が残念。



で、一度インプレを書くタイミングを逃していながら、なぜ今書いているか?というと、そのタイミングが出来てしまったから。そのタイミングというのは非常に残念な事で、それは4/20にHillが肺がんによって逝去したという事実。この事をオレは昨日知ったばかりで、まだショックが残った状態。一応体調がよろしくないという事はラパポート氏が書いていて、『Time Line』はそういう状態でありながらも作り上げたものだという事も知っていたので、いつかこういうニュースに触れる可能性は知っていたけれど、やはり残念。



R.I.P.