Bill Laswell / 坂田明 / 吉田達也 / 山下洋輔 / 大友良英

昨夜のピットインはBill Laswellによる「Tokyo Rotation 2007」の三日目、最終日。元々行く予定だったライブ。だけどチケットをオーダーした時点では、休日だとは思っていなかった。

この日の目当ては吉田達也。今年初の吉田のライブに接する機会。吉田は多々ライブを行っているので見たければいつでも見に行けそうだけど、だからこそオレは吉田はピットインでのライブしか見ないことにしていて、だから殆ど藤井郷子カルテットでの演奏を見る事になるのだけど、何故か今年は藤井郷子カルテットはピットインでライブをやっていなくて、そのせいでここまで吉田の音を聴いてなかった。

1stセットは主役のLaswellに吉田と坂田明、そして1stのみ出演の山下洋輔が加わる。この組み合わせは面白い。というのは、坂田は70年代の山下トリオのサックスを担当していて、Laswellと吉田は現Painkillerのリズム隊。お互いをよく知っているコンビが二つ重なってカルテットになっている。それがどういう演奏を行うかと思ったら、やはりというかなんというかフリー・ジャズ。それも、中期と後期のColtraneのグループが重なり合って出来たかのような音で、スピリチュアルを感じさせる。坂田はアルトだしLaswellはエレキ・ベースだけど、音の感触はそういうものだった。リズム隊のバッキングを受け、カッコいいソロを吹き続ける坂田のサックス。前日とは違って、腰の据わった音とラインでグルーヴを作るLaswell。今まで見た演奏では音も演奏そのものもあまりいい印象の無かった山下も、昨夜はさすがなドシャメシャぶりを発揮(音も断然良かった)。そして吉田。やはりこの人は異能。前日の山木も凄腕だけど、吉田はどう聴いても変態的。この個性は唯一無二。芳垣安洋外山明、そして吉田。この三人のドラムがいる今の日本は、他国のシーンに対して負けていないどころかいくらかリードしていると思える。話が逸れたけれど、1st最大の見せ場は山下と吉田のぶつかり合い。Laswellが加わっていたかどうか覚えていないけれど、この二人の叩きあい(この言葉が似合う)は、なかなか凄まじかった。いつもの様に煽りまくる吉田のタイコに、山下が急に熱が入ったかのような反応。それに呼応するかのようにあれこれと音を繰り出す吉田、「まだまだ若いもんには負けん」とでも言わんとするかのような山下の応酬。いくら場数を踏んでいるとはいえ、基本的にジャズ畑の山下には吉田のタイコは想定外の音も多かっただろうけれど、それでもだからこそ刺激を受けているかのようで、ここの激しさは聴いているほうの熱も上げていた。

休憩を挟んでの2nd。山下が抜け大友良英が加わる。これまた楽しげな組み合わせ。調べた事無いからわからないけれど、個人的には大友と吉田の共演というものが、ライブでもCDでもあまり思い浮かばず、一度この二人の共演を聴いてみたかった。そして最近はJim O'Rourkeとの共演が多い大友と坂田というのも面白い。果たしてどうなるかと思っていたら、こちらのセットは完全にロック寄り。最近の大友のギターを聴いていれば大体の想像はつかないわけでもなかったけれど、ワウを効かせた音はロックとかファンクとかMilesとか、そういう音での空間になっていて、フリー・フォームなロック的なものを感じる。最初の曲ではバッキングで貢献していた大友も、次の曲ではU字型の金具を押し当ててノイジーな音を炸裂させたりして、エクスペリメンタル系の代表格らしい音を思いっきりぶつける。それに激しく反応するのは坂田。1stでは若干山下に気を使っている感じのあった坂田は、2ndでは爆発の連続。途切れない。この人凄い。いまやオレの最も好きなサックス吹きかも。長年培ってきたフリー・ジャズでの演奏より、このアヴァンな音の中での方がより強烈な音を出すなんて、円熟の境地に達する気ゼロ。ホントに感服。吉田は坂田と大友の音を更に過激に盛り上げるかのように、休みなき煽りまくり。あのフロントをずっと煽る。笑える。主役のLaswellは時折NYアヴァンな音を挟むけれど、どちらかと言えば暴れまくる連中をキッチリ支える事に専念。フレーズとしてはあまり面白いものを繰り出して来る感じではなかったけれど、音の存在感はあって悪くなかった。




前日の追記で「奇声がうるさい」と書いたので付け加えておくけど、昨夜は特に気になるような奇声はなかった。それよりも、そろそろタバコの事は考えた方がいいかも。オレはタバコ吸いなので、開演前や休憩中はどうしても一〜二本タバコを吸う。嫌いな人には迷惑だとわかっているけれど吸ってしまう。だけど演奏中は絶対吸わない。これだけは最低限のマナーだと思う。昨夜は「演奏中は禁煙」というアナウンスがあり、演奏中でもタバコを吹かす事は出来ない状態だったけれど、それでも吸ってるやつがいて「ちっ」と思った。ダメと言われている所で吸うのは、嫌煙家の反感を増幅させ、さらにタバコ廃絶運動を増進させる。そのタバコを吸ったやつの顔を一目見ておこうと思ったら日本人じゃなかった・・・。日本語のアナウンスがわからなかったのだろうけれど、この人、時々見かける人なので、日本に来たばかりではないはずなのだからそろそろ日本語を理解して欲しい様な気がする。

それで思ったのだけど、ピットイン店内禁煙でいいんじゃ無いだろうか? だけど救済措置は欲しいので、店の外に灰皿と吸煙機を備えて欲しい。それで再入場可能にしてくれれば、席を確保した後は演奏が始まるまで外でタバコ吸って待っていた方が気が楽でいい。ドアーズなんかはそんな感じだし。



この日のチケットを取った後、磨崖仏のHPを見ていたらなんと共演者がヤマタカアイと大竹伸朗になっていてビックリ。その後訂正されたけれど、どうも元々はその二人にオファーを出していた模様。そして2ndにはゲストありとあって、もしかしてここにアイ(あの機械が無いので大竹はないと思っていた)が出てくるんじゃない蚊などと思っていたけれど、そうはならず。まあ、無難に山下が途中かアンコールで加わるのだろうと思ってもいたけれど、それもなし。結局ゲストは無しだった。これって、Laswellの人徳?