Bill Laswell / DJ Krush / 近藤等則 / 山木秀夫

Bill Laswellについて今更どうこう言う必要はないと思うけれど、個人的にはプレイヤーとしてのLaswellに、あまり興味はない。だからといって、あの「とにかく面白そうなやつをまとめて演奏させる」というプロデュース業も、あまりパッとしない(全否定ではない)。そのLaswell、時々日本に来てライブ・セッションを行い、小銭を稼いでいく。今回も「Tokyo Rotation 2007」と題してピットインで三日間、日本人から金を巻き上げている。

その三日間の日程が発表されて、パッと見て初日に中村達也がいるのを見て、達也ファンが大挙するのは目に見えていたので、このセッションはそのファン達に譲る事にして、二日目の面子を見ると近藤等則山木秀夫の名前を見つけ、まあこれも行かなくていいと思った。そして三日目、吉田達也という事で、とりあえずこの三日目だけは行くことに決めチケットを購入。通常なら当たり前に1stと2ndは通しなのだけど、LaswellやJohn Zornはギャラが高いらしく、セットごとに料金が発生する。以前Pain Killerを1セットだけ見たとき不完全燃焼だったので、高くつくけれど通し券を購入。まあ仕方ない。そうこうしている内に、再度ピットインのスケジュールを見ていたところ、なんと二日目にDJ Krushの名前が・・・。見落としていたのか面子が変わったのか知らないけれど、確かにKrushと書いてある。オレはこんなにKrushファンなのにも関わらず一度も生の音に触れた事がない。だけどBな連中集まる場に今更行く気にもなれず、余程のチャンスがなければ生のKrushの音に触れる機会は無いと思っていたけれど、その余程のチャンスがやってきた。慌ててチケットを購入。勿論通し券。それ以来昨夜のライブまで、口には出さないけれど興奮が続いていた。

Bな連中が多く来るかと思っていたけれど、そうでもない。というか、近藤ファンが多いような雰囲気。Laswellファンというのはあまりいそうにないので、それ以外はアヴァン音楽ファンなのだろう。まあ、流石の大盛況だったけど。

ピアノを運び出して、DJセットを配置。しかも主役のLaswellも脇にいて、中央には近藤が腰をすえる。その配置で大体音の想像はつくけれど、まあ、とにかくKrushの音が聴ければいい。そして登場した面子。おお、Krush、ちょっと後ろ髪が長いぞ。そのKrushアンビエントな音を鳴らして演奏が始まる。それに絡むのは近藤のラッパ。Krushが音を出しただけで嬉しいわけだけど、その次に最近のKrushらしいリズムが走り出す。それに絡む山木。当然リズムを奪い取るというよりも、オカズな叩きで色を添える。ここまではなかなかカッコいい。「やっぱKrushのリズムはカッコいい」と思っていたところ、ダブなリズムに転換。この時点でKrushはリズムを止める。ここでやっとLaswellの存在を思い出す。思いっきりダビーなベースの音はなかなかいい。リズムを完全に引き受けた山木のビートもグルーヴを作る。このグルーヴが続く中、近藤が思いっきりひとり阿鼻叫喚を始める。リズムを渡したKrushは上モノを提供するけれど、近藤の音にかき消される部分が多い・・・。そしてその後、洗練されたドラムン・ベース的なリズムが鳴り、それに山木が思いっきり絡む。ここが一番の聴かせどころだったか。若干、モソっとした印象のあった山木がスネアの高い音を入れてくる瞬間はなかなか気持ちよかった。それに呼応して近藤がまたしても吹き鳴らす。うーん。それが治まり、1stは一旦ここで演奏が終わる。続けてLaswellのJacoを思わせる音色のソロで次の演奏が始まる。これもまあまあいい感じ。と思っていると、リズムが重なり、その後は近藤の阿鼻叫喚が始まる・・・。うーん、と思っている間に演奏が終わった。

と、まあ大体こんな感じだったと思う。ムンベーなリズムは二曲目の演奏だったかもしれない。ちょっと記憶があやふや。で、2ndだけど、特に書く事はない。というのも、構成はほぼ1stと同じで、演奏のと切れがなかったぐらいの違いしかない(1stもホントは切ってなかったのかもしれない)。Krushの上モノが若干変化があったけれど、演奏のスタンスは同じだった。うーん。

個人的な最大の注目のKrushだけど、今回のセッションではその特性を強く引き出せたとはいいがたい。簡単に言うと、今回のセッションは完全に近藤主導のものだったといえる。あれだけ吹き鳴らされれば、Krushのスクラッチも相当意識して追わなければ聴こえにくい。音量のバランスの問題もあったのだろうけれど、普通に考えても今回はKrushを使うという事に斬新さがあったわけで、それに対する配慮がもう少しあってもよかったと思う。

Krushには今後もこういう場に出てきて欲しいと思うけれど、もう少し我を出すか、面子を考えて参加した方がいいと思う。オレはもっと、Krushの音が聴きたかった。