Paal Nilssen-Love / 大友良英 / ナスノミツル / Peter Brotzmann

Paal Nilssen-Loveの来日が決まって、日程とセッションのメンバーが発表されて、あまり悩みもせずに両日とも行くことを決めていた。という事で昨夜のピットイン。やはりこの三日ほどのオーガナイズはマーク・ラパポート氏だったようで、昨夜もライブ前にMC。それによると、Nilssen-Loveが来日を決めたとき、まず日本でセッションしたいメンバーとして、最初に名前をあげたのが大友良英だったという話を披露。なんとなく、Nilssen-Loveの音楽的な部分から大友というのは想像から外れるところにあったのだけど、やはり大友という存在は気になるのだろう。その料理評論家の大友が紹介され、続いて「昔は関西にナスノ有りと言われ、今は関西にナスノおらずと言われる」ナスノミツル、そしてNilssen-Loveが前夜と同じく「ここ20年で最もインパクト」と紹介されてメンバーが揃う。

1stセットは演奏を閉じることなく音が繰り出される。最初から高いテンションを聴かせるステージ上の三人。まあ、あまりいう事は無い。とにかく音の迫力に圧倒される。恐らく疲れるという事を知らないNilssen-Loveのドラミング。好きなように弾けばいいという格好の場を与えられた大友のギターは、アグレッシヴではあってもノイジーではない。過激な音に囲まれ続けてもクールにグルーヴを決め、時にはブツ切りの音を叩き込んでくるナスノ。一歩間違えればただのうるさい音になる事必死のデカイ音の中身は至福の音だった。

休憩を挟んでの2nd。ゲストが入る事はわかっていたけれど、それがPeter Brotzmannである事も事前に予想していたけれど、1st時からステージの右側を開けて、いかにもサックス奏者が入るようにセッティングされているところがわかりやすくていい。しかもBrotzmann、休憩中にステージでサックスの音のチェック。さて、この四人での演奏、1stからどう変貌するかと言うところが焦点。セット自体は3つの演奏に分けられる形で、ここでの混沌は、もうオレの頭にはMilesのアガパン・バンドがフリーにセッションしてしまっている様にしか聴こえなかった(またMilesかよ・・・、と言うな)。Brotzmannの驚異的なサックスは終始咆哮を続け、大友は1stよりも裏側に回り、ワウを効かせたギターで空間を演出。Brotzmannを煽り続けるNilssen-Loveは限界という言葉がない強い音をこれでもかと言うぐらい、いや、もう当たり前の様にキメのような音を繋ぎ続け、そんな状況でもナスノの音が全体を先導していて、耳が追うリズムはナスノのベースラインである事に気付く。SDLXを含めて、この三日でのハイライトは、2ndの2つ目の演奏だろう。これは音楽的な好みがどうこうと言う次元を超えていて、なぜなら感極まったBrotzmannが、最後の瞬間に思わずジャンプしたのだから。まさかあのBrotzmannがジャンプするとは・・・。思わず立ち上がって拍手しようかと思った。

本編の最後はBrotzmannがメロディーを吹くような演奏で、フリーという極めて厳しい道を歩み続けている者が少しだけ垣間見せた言える穏やかな表情。これが染み入らないわけが無く、そういう音を目の当たりに出来ていると言う事実が、オレの中に痛いほど入り込んできた。まあ、そうは言っても、アンコールはガチガチに強烈な音の咆哮だったけど。



とにかく水金土と、かなり内容の濃い音、強烈な音を浴び続けた三日間だった。これで帰ってくれて助かった。この後、あと一週間ぐらい東京で演奏され続けると、オレはもう、かなりおかしい状態になりそうだった。