Twigy

数少ない、オレにとって気になり続けている日本人のラッパー、TwigyTwigyを知るきっかけになったのは、ECDの『Homesick』に入っていたアンセムとも言える「Mass 対 Core」。この曲の3バースめがTwigy。高い声で高速のぶちかましていて、めちゃくちゃカッコイイと思い、即気に入った。その後Microphone Pagerの『Don't Turn Off Your Light』がリリース。このアルバム、恐らくオレが最も聴いた日本のヒップホップのアルバム。パーティー・ラップが幅を利かせていた時代に(今でもそうだけど)、アルバム1曲目の「病む街」の、阪神淡路大震災をテーマにした社会派とも言えるリリックに頼もしさも感じた。その後MPは活動を停止し、Twigyは個人名義での活動を活性化させる。名コンピ『悪名』の「百鬼夜行」なんて、Twigy以外には出来ないラッピン。そしてメジャーの東芝EMIから初ソロ『Al-Khadir』をリリースし、着実に日本のハードコア側のヒップホップを押し上げていった。その後も手を変え品を変え時には名前を変え、コラボなどもこなし、十分とも言えるキャリアを積み上げ、『Twig』以来約一年ぶりのアルバム『Akasatana』がリリース。驚く事に、このアルバムにトラックを提供したのはPrefuse 73(Scott Herren)。ヒップホップのファン層以外からも支持されるP73は、とりあえずアブストラクト・ヒップホップという事にしてしまいたいのだけど、そういう音とTwigyがコラボということが若干違和感を感じないでもないのだけど、実はTwigyはAudio Sportsの『Eat + Buy + Eat』にも参加していた事もあるわけで、それを考えれば実はそんなに意外に感じる必要は無い。

期待と不安が入り混じった状態で『Akasatana』を聴く。P73の音にハマるラップが出来るのかどうか、そこが焦点。そしてその結果は、違和感なし。というか、このアルバムを聴いて思い出したのは、それこそ『Al-Khadir』とか『Seven Dimensions』(このアルバムのボーナス・トラックはあの曲)のようなソロとしての初期のアルバムで、予想外にP73のトラックはマトモに聴こえる。それについて、ライナーを読んで思ったのだけど、P73は今回のコラボの前からTwigyを知っていたらしく、そういう状態でP73はラップ様のトラックを作ったという事は、やはりいくらか、今までのTwigyの作品を意識してトラックを作ったのじゃないだろうか?、という事。それまでのP73名義の作品は、あまりラップを意識して作ったものと思えず、そういうトラックにTwigyが挑むという構図を予想していただけに、ちょっと拍子抜け。でも、悪い作品じゃないし、ラップが乗った状態で聴くから割と普通に聴こえるのかもしれないという考えもある。という事は、やはりこのアルバムのインストが欲しくなってきた。リミックスものは間違いなく出ると思うけれど、はたしてインスト・アルバムを用意してくれるのかどうか、それは今後のお楽しみ。









Twigy 『Akasatana』




Microphone Pagerのもう一人、Muroはいつの間にか興味の対象外になった。まあ、経済的には助かるのでいいのだけど、なんか妙にNigoにでもなりたいようなMuroの最近の動向に、あの頃の方がカッコよかったと思っても、それはオレの個人的見解でしかないのであれなんだけど、やっぱなんだかなあ、と、思う。



Audio Sportsは元々恩田晃、竹村ノブカズ、山塚EYEのユニットで、『Eat + Buy + Eat』はリリース時に購入したので、実は「Mass 対 Core」以前にTwigyを聴いていた事に後年気付く。だけどその頃のTwigyのラップは今ほどキレキレじゃなく、特に印象が強いものではなかった。そしてMuroは、そのキャリアをKrush Posseでスタートさせている。Krush PosseというのはDJ Krushの最初のユニットのようなもので、こういう色んな点が線となっていたという事が、「たかが音楽」からなかなか足を洗いにくい状況にさせる一因だと思う。