Bryan Ferry

Endless Highway』を買ったとき、悩みながらも踏ん切りをつかせたのは、Bryan FerryによるDylanのカバー集『Dylanesque』を買う為に手にしていたからだったりする。Dylanのカバー集とThe Bandのカバー集が同時期にリリースされて、それを同じ日に購入することは巡り合わせだと思った。

一応、ロックの大きな流れに沿って名前の挙がるバンドのCDなんかは少しずつは耳にしているので、Roxy Musicも『Roxy Music』(Enoが参加していた)、『For Your Pleasure』(これもまだEnoが参加していた)、『Country Life』(これはジャケ買い)、『Avalon』(AORな名盤という言葉につられた)、『Heart Still Beating』(これが初めて買ったRoxy Musicだった)は聴いている。Ferryのソロは、「Tokyo Joe」(キムタクのドラマの主題歌だった / 結構好きなドラマだった / だから買った事は誰にも言ってない)の入った『In Your Mind』だけ持っているけれど、他の楽曲は覚えていない。と、Ferryという人に対しては大して思い入れも無く、あまり評価もしていないわけだけど、まあ、長年その地位を守り続けている人だから、それなりの物を作ってくれるだろうという考えと、腐ってもDylanの楽曲なのだから、よほどの事が無い限りダメなものは出てくるはずが無いと思った。

好みの問題だと言う事はわかっている。と、前置きを書いておくけど、これはかなりひどい。つまらなすぎる。そもそもFerryの声に全然魅力を感じていないので曲が良くなければこの人のアルバムはダメだと思っていたけれど、Dylanの楽曲を用いてこんなツマラナイものを作り上げるなんて、ある意味才能溢れる人。ここまでツマラナイとかえって毒々しさを感じる。と、なると、これは凄いアルバムかも。このひどいとしか言いようの無いジャケットも、嫌がらせの一環として捉えれば納得。中村とうよう風に言えば、「ホントは0点だけど、それだとかえって注目を集めるので3点」ってなもんだけど。









Bryan Ferry 『Dylanesque』




Bryan Ferryという人はオレのイメージではAORなのだけど、AORとしても中途半端なイメージがあって、常にこの人がある程度の人気を持っているということが不思議だった。今回はその不思議な気持ちをさらに深めてくれて、ミステリアスな存在かもしれない。

AORと言えば、『ホリデイ』という知性的でありながらエンターテイメントも忘れていなさそうな素晴らしく面白そうな、カンヌもアカデミーもとれそうな凄そうな映画の主題歌かなんかがCMで流れていて、間違いなく聴き覚えがあるにもかかわらず、なかなか思い出せなかったのでネット上でサントラを見てみたりしたけれど、よくわからない。かなりイライラしてしまったのだけど、なぜかふと曲名が浮かび、「ああ、そうだ」とすぐにMP3に変換済みだったその曲を聴いた。って、引っ張るほどのものでは無い。その曲とはBoz Scaggsの「We're All Alone」の事で、オレが唯一持っているBozの名盤『Silk Digrees』に入っている。映画で使われているのは他の人が歌ったバージョンのようだけど、同じAORなら、オレはFerryなんかよりBozを聴く方が二百四十七倍楽しめる事がわかっただけでも収穫。



ホントはそろそろFerryみたいな音楽を気に入る事が出来て、ガチガチなロックとかを聴かずに日和った状態になっていたかった。AORとかフュージョンとか、そういうのを聴きながらブランデー・グラスを片手に「昔はオレも青かったな」等と口にし、Suicidal TendenciesとかStoogesのCDなんか跡形も無く、わたせせいぞうな気分を味わいたいのだけど、なんか上手くいっていない。まだ寒いのにビール飲みながら「マイ・アイディア・オブ・ファン」って、CDにあわせてニヤニヤ歌ってる場合じゃ無いはず。おかしい。