Bebel Gilberto

Bebel Gilbertoは、ボサノヴァ好きなら誰もが知っているように、Joao GilbertoとMiuchaの娘という、天性の素質を持った人。実質的な1st『Tanto Tempo』と2ndの『Bebel Gilberto』はどちらもよく聴いた。現代性を伴った音で、これだけ穏やかな音も珍しいと思えるような音と、Bebelの魅力を持った声と歌唱で、イラついている時にこの音楽を聴けば穏やかな気分にさせられる魅力がある。

新作『Momento』について、なんのリリース情報も持っていなかった。だからレコファン店頭で見つけた時は「おおっ」と思わず声を出してしまい、近くにいた他の客に「え?」という顔をされるという、気まずい思いをしたけれど、何事も無かったかのようにレジに持っていった。

『Momento』は今までのBebelの作品と感触が異なるものではない。Subaが関与した1stの頃から、エレクトリックな音を内包した現代的なボサノヴァという新しいカテゴリーの筆頭として認識されてきた音が、そのまま引き継がれている。多少、エレクトリックな感触が今までよりも強く感じる部分はあって、それが良いか悪いかは聴く側の好みに左右されると思うけれど、オレとしてはその部分はOKで、この音を使えることがBebelの持ち味でもあるのだから、逆にドンドン電子音化していって、電子音のみで作られたバックにBebelの声が乗るという展開になってもOKだと思う。そうなっても多分、Bebelの持ち味は変わらない。美しく懐かしく気高いけれどすぐ近くにある、Bebelの作る音楽はそういうものだと思う。









Bebel Gilberto 『Momento』




久し振りにBebelを聴いてみて思ったのは、彼女がシーンに登場して、その後ebtgがユニットとしての機能を停止させたのは偶然だろうけれど、なんとなくつながっている様な気がする。『Walking Wounded』に絡んで、ebtgのBen Wattは「ドラムン・ベースは21世紀のボサノヴァ」というような事を言ったと言われているけれど、新しいボサノヴァというタームは、ebtg、もしくは彼らがプロのミュージシャンとしてのキャリアを始めた頃から漠然とした目標として存在していたんじゃないだろうか? それを頭に置きつつ創作活動をし、ドラムン・ベースを取り込み、さらに『Temperamental』まで歩を進めてみたけれど、Suba & Bebelという、ホンモノのブラジリアンが(Subaはブラジル人ではないけど)その血のなせる技として作り上げたものは、より、新しいボサノヴァという言葉に相応しいといえるようなもので、それを聴いたとすれば、Benのような優れた嗅覚の持ち主であれば、自らの歩みをもう一度振り返るような時間が必要になったとしても納得できる。まあ、全部勝手な憶測。



Bebelに話を戻すと、2nd『Bebel Gilberto』の一曲目「Baby」はCaetano Velosoの曲で、オリジナルは『Tropicalia』に入っている。Bebelの父親Joaoも∞傑作『Joao Gilberto』で「Avarandado」というCaetanoの曲をカバーしているけれど(オリジナルは『Domingo』に収録 歌っているのはGal Costa)、その『Joao Gilberto』にはBebelに捧げた「Valsa (Bebel)」という曲があるし、親子ともにセルフタイトルのアルバムでCaetanoの曲をカバーしているし、偶然なんだろうけれど、そういう事実は必然でつながっているような感じがする。

ちなみに『Momento』のジャケット、パっと見はキャミでも着ているような薄着だと思ったけれど、裏ジャケを見てそれが水着である事がわかる。別にそんな事をイチイチ書かなくてもいいと思うだろうけど、その水着だと気付かせる裏ジャケの写真はハッキリとその姿が見て取れるわけではないのだけど、その水着がどうもブラジリアンしていて、なんかちょっと・・・。Bebelにそういうセクシーな姿は求めていない・・・。