Ry Cooder

スライド・ギターを聴くと、いつも頭に思い浮かぶのはRy Cooderだったりする。そのRy Cooderの新作『My Name is Buddy』を購入したのだけど、Ry Cooderのアルバムを買ったのは何年ぶりだろうか? 元々Ryは好きなミュージシャンの一人であったにも関わらず、新作が出てもシカトするようになったきっかけがあったわけで、それはあの『Buena Vista Social Club』を見たからだった。オレの記憶では『BVSC』は、確かサントラが先に出て、映画の公開が後になったと思う(少なくても日本においては)。だけどそのサントラは映画を見てから購入する事にしていたので、とりあえず映画の公開を待ち望み、いざその初日、多分初回を見に行った。が、この映画がつまらなく、さらにライブ・シーンでRyがキューバの翁バンドに混じって演奏しているのだけど、このRyの演奏がダメダメで、全然周りにあっていない。ハッキリ言ってかなり場違いなギターとしか思えず、落胆した。Ryの様に、音楽に勤勉な人があんな合わない音を出す事自体がオレには理解できず、だからサントラにも手を出さなかった。その後Ry絡みの新作が出ても、なんとなく手にする気持ちも無くなり、現在に至っていた。

今回はそろそろいいかと思い、ちょっとイマイチなジャケットだけど、久々に手に取ってみる。ブックレットの厚さなんかを見ると、多分日本盤を待ってその対訳を読むべきなのだろうけれど、もしそうしても、結局対訳に目を通さないと言ういつものパターンも予想できたので、日本盤を待たずに輸入盤を購入。とにかく聴いてみる。聴き始めて一秒で、「ああ、Ry Cooderの音楽だな」と思う。別に新機軸を求めているわけではないので、今までの記憶の中のRy Cooderの音が鳴り出しても別に不満は無い。アメリカン・ルーツ音楽を、Ry Cooderの中で再構築して、それを特に今の音にせず、ありのまま表現している。ロックと呼ぶような類の音ではないし、本来ならば少し持っているエスニックな感触も取り払った、Ry Cooderにとって一番やりやすいと思える音楽。最後の曲を除くとスライド・ギターの印象は無いけれど、この音楽の中ではそういうものは必要ない。レイド・バックした音楽。

この手の音は日本では好まれないような感じがするし、東京のような汚い都市(ホントは日本の大体の都市に対してこの言い方が当てはまると思うけれど)に最も似合わない音。だけど、そういう音を聴きながら歩くというミスマッチが、実は凄く気分のいい事だったりする。









Ry Cooder 『My Name is Buddy』