Neil Young & Crazy Horse

しつこくNeil Young。『Live at the Fillmore East』は、アーカイヴ・シリーズという、過去の音源を発表していくシリーズの第一弾。ファンには待望のシリーズで、このアルバムは伝説の音源らしい。自慢じゃ無いが、オレはこういう情報は一切持っていなかった。だからとにかく、Neil Youngの1970年に録音されたライブというだけの情報だけで音を聴く。

聴きながら考える、Neilのギターの魅力って何? 今では散々凄いギターをライブで浴びるように聴いているけれど、それと違うベクトルのNeilのギターに今でも惹かれるのは何故だろう? この手の土臭いロック、小洒落たブランドが好きな連中とかクラブ音楽にしか興味の無い連中には絶対に届く事の無いこういう音を、オレはガキの頃にサザン・ロックというものの中でいくらか聴いた(リアル・タイムではないです)。The Allman Brothers BandのDuane Allmanのギターに、サザン・ロック志向だった頃のEric Claptonに、Lynyrd Skynyrdのトリプルギターに、力強い、線の太い音をオレは聴いていた。Neilのギターはそれらに比べれば線の細いギター。だけど、そのサザンな連中のギターと違ってNeilのギターには感情の先走りが感じられて、今聴けば稚拙とすら思える「Down by the River」におけるギターソロにある感情の強さに、Neilのギターの魅力を思う。

もう少し考えてみる。ギターだけじゃなくて、Neilの楽曲に惹かれるのは何故なのか? 例えばThe Band。彼らの音に、いつかどこかで聴いたような既視感を感じる。ゴスペライズされたようなコーラスや、実際には恐ろしく上手いギターのRobbie Robertsonの奏でる音は、1stアルバムの『Music from Big Pink』の頃から既に完成された世界を持っている。そこにはメンバー間の信頼関係という、バンド・スタイルだからこそ出来る音を、その最後を告げる『The Last Waltz』でも見せ付ける余裕がある。Neilは、彼が全幅の信頼を置くCrazy Horseという、アメリカでしかありえない音を奏でるバンドが支えている。だけどソングライティングという部分において、Neilはバンドと言うものに頼らず、自身から生み出せれるものを使う。だからそこにはバランス間の欠いたものや、独りよがりと思えるようなものもある。それでも、必ずNeilらしいセンチメンタリズムが顔をのぞかせいて、The Bandの楽曲と同じように既視感を感じさせる楽曲でありながらもThe BandよりもNeilに惹かれるのは、Neilの持っている「彼らしさ」が大きく作用しているのだと思う。

と、こういう事を色々思わせる『Live at the Fillmore East』。モノがモノだけに明らかにNeilファン向け。広く一般にアッピールするようなものではないだろう。でもこれは結構重要なもので、それはオレは『Weld』からNeilを聴くようになったのだけど、それ以降『Unplugged』、『Year of the Horse』、『Road Rock Vol.1』と、Neilはマメにライブ盤を出している印象があるのだけど、『Weld』以前を見れば、実は『Time Fades Away』と『Live Rust』の二枚しか公式なライブ盤は無い。しかも『Time Fades Away』は未だにCD化されておらず、従って現在手に入るものとして『Live at the Fillmore East』は意外にも、Neil Young最初期のライブの音を聴ける唯一の公式な音源という事になる。

という事なので、Neilファンにとっては嬉しい音源。それ以外の人にとっては、まあ、どうでもいいのだろう。









Neil Young 『Live at the Fillmore East




大体オレは、自分がこんなにNeil Youngの音楽を聴く事になるとは思わなかった。オレが初めてNeil Youngというミュージシャンを認識したのは、中学生でサッカー小僧なガキだった頃で、その時にライブ・エイドという今のオレなら切って捨てそうな偽善の塊のようなイベントのとり近くで出てきた時だった。「なんだこのゴリラ?」。マジでそう思った。その次だかなんかがDylanで、その時にDylanにも「何このオッサン?」と思ったのだけど、ビジュアル的にはNeilの方がインパクト強かった。そしてどんどんサッカーより音楽に嵌っていきながら、当然の様にNeilを知るのだけど、「ああ、あのゴリラか」としか思わず、耳にする事は避けていた。それが何のきっかけか、CSN&Yを聴いて「ああ、あのゴリラもメンバーなのか」と、しつこくゴリラ扱いしていたのだけど、Sonic Youthが関わっているというだけで『Weld』に手を出す。そしていきなり評価が変わる。「なんだこのオッサン、スゲーかっこいい!!」。現金な態度とは正にこの事。それから少しずつNeilの音を聴き始め、今では大体の主要な曲はわかるし、新しい音が出る事が楽しみな存在の一人。CDもオフィシャルのものは八割ほど持っている(『Zuma』なんざ、間違えて買ったせいで二枚持っている)。でも、ハッキリいって、今後殆ど聴かないだろうと思うものも多々ある。ウダウダ書いたけれど、とにかく好きなミュージシャンの一人。