Soft Mountain

昔流行ったプログレはあまり好きではないのだけど、King CrimsonSoft Machine、Henry Cowは嫌いじゃない。特にSoft Machineは、最初期のメンバーKevin Ayersと、Robert Wyattのソロとしての作品が好きだという事もあるけれど、一番気に入っているのはその二人がいない『5』だったりする。Soft Machineのアルバム中、最もジャズっぽいニュアンスを持っているというのが、『5』を気に入っている理由。その『5』にジャズっぽさがある最大の要因は、やはりElton Deanだろう。従ってオレにとってのSoft Machineというのは、Elton Deanがメインだったりする。なので2003年に無理やりなネーミングで結成されたSoft Worksの『Abracadabra』を購入し、ライブも見に行った。さすがに「すげー!!!」と思ったりはしなかったけれど、演奏力を伴った面子だけあって、悪い印象も無い。出来ればもっとこじんまりとしたハコで見たかったという、注文ぐらいだ。その後Soft WorksからAllan Holdsworthの代わりにJohn Etheridgeが加わり、Soft Machine Legacyという名前に変更。なんか変な期待が高まっていたけれど、残念ながら昨年、Elton Deanが逝去という事で、オレにとってのSoft Machineというストーリーは完結。

が、ここにボーナス・トラックが加わる。それは2003年のSoft Worksの来日の際に、密かにElton DeanとHough Hopperの二人は、ホッピー・神山と吉田達也という、日本が誇るプログレ・ミュージシャンとセッションを行っていたようで、それがこの度『Soft Mountain』というタイトルでさりげなくリリースされている。オレはその昔、「King Crimson吉田達也をドラムに迎えればいい」と、大暴言を某掲示板に書き込んだ経歴を持つ。その時はかなり反発を喰らったような気がするけれど、世界が出来上がった大御所のプログレバンドが吉田達也を加えれば活性化されるはずというオレの目論見は、今でも密かな願望として残っている。それを、まあKCほどの知名度は無いけれど、元Soft Machineの二人が共演したわけで、その事実だけでも楽しい出来事。

そのセッションをリリースするにあたって、一応Soft Mountainというユニット名が付いている。これ、誰のネーミングかなんて、わかる人にはすぐわかる・・・。まあ、このわかりやすいネーミングに苦笑いしながら聴く。どんな音か予想は出来るけれど、何も考えずに聴く。

約30分の演奏と、28分近い演奏の二曲が収録されていて、どちらも特定の楽曲の無いセッションだと思われる。なので、カチッとした構成が持ち味のプログレとしては、その系のファンには不満足かもしれないけれど、各々がそれぞれの得意な瞬間を引き出すように演奏していて、Elton Deanが朗々と吹き続ける時は、吉田は割りと抑え目にバッキングし、だんだんと熱が高まって、全体が暑くなる時には、Elton Deanも熱のこもった音を放つ。ホッピーはエレピのような音で全体を注意しながら音を入れ、時折その音色で全体を落ち着かせたり、さりげなく煽ったり。Hough Hopperは、当然グルーヴを作りながらの演奏。ビシバシ決まるフレーズという感じではないけれど、あの吉田の叩きっぷりにも引き離されず、必要な時には存在感をかもし出す。

まあ、「凄い未発表セッション!!」という類のものではないので、四人の誰かのファンでなければ目を向ける必要は無いかもしれないけれど、逆に言えばこの四人の誰かに興味を持ち続けているなら、文句なしに買いの一枚。









Soft Mountain 『Soft Mountain』




Soft Machineというグループは結構激しい変遷をしていたバンドなので、Wikipedia辺りでチェックして欲しいのだけど、Elton Deanもそんなに長く在籍していたわけではない。Elton Deanが抜けて代わりに入ったのがKarl Jenkinsで、オレはこいつが嫌い。それは本文の『Abracadabra』のリンク先のamazonでのレビューにも書かれているように、Soft WorksがSoft Machineと名乗れなかったのはこいつが邪魔したからと言われている事と、こいつの作った音楽が嫌いだから。恐らく、この名前を聞いただけでは気付かない人も多いと思うけれど、実はこいつの音楽は結構色んなところで使われている。好みの問題という事は否定しないけれど、こんなにツマラナイ音楽もあまり見当たらない。こいつがSoft Machineのメンバーだったという事は、悪い冗談としか思えない。そもそもHugh Hopperが抜けた時点で、Soft Machineの名前を使っている事もおかしい。イラつく。